CASBEE 2026.10.27

CASBEEの届出が必要な自治体は?申請の流れと費用を解説

CASBEEの届出が必要な自治体は?申請の流れと費用を解説

自治体版CASBEEの届出要否は、建築地や建築物の規模、工事の種類によって異なります。確認申請の準備を進める段階で、担当地域に届出義務があるのか、いつまでに何を出せばよいのか迷う建築士の方は少なくありません。

当記事では、届出が必要になる3つの条件と対象自治体の一覧、自己評価から計画書提出までの申請の流れ、費用がかかる場面を解説します。確認申請前の段取りづくりにお役立てください。

1.自治体版CASBEEとは

自治体版CASBEEは、自治体が条例・要綱などにもとづく建築物環境配慮制度の届出に、CASBEEの評価手法を取り入れた仕組みです。CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、省エネや資源循環に加え、室内の快適性や景観への配慮まで含めて建築物の環境性能を総合的に評価します。

自治体版は2004年4月に名古屋市が導入したのを皮切りに、大阪市や横浜市などの大都市へ広がりました。各自治体はヒートアイランド対策や緑化など地域の課題を反映した評価ツールを用意しており、建築主が自己評価の結果を届け出る形が基本です。

出典:住宅・建築SDGs推進センター「自治体によるCASBEEの活用」

出典:住宅・建築SDGs推進センター「CASBEEとは」

1-1.自治体版CASBEEと任意のCASBEE評価認証の違い

自治体版CASBEEと任意のCASBEE評価認証は、根拠も目的も異なる別の制度です。評価認証は、住宅・建築SDGs推進センターが認定した民間の評価認証機関が評価内容を有償で審査する任意の仕組みで、環境性能を対外的に示したい案件で活用されます。

自治体版は条例・要綱などにもとづく届出で、義務・任意の扱いは自治体により異なります。建築主側の自己評価が基本であり、届出を済ませても評価認証を受けたことにはなりません。認証書が必要な案件では、届出とは別に評価認証を申請しましょう。

2.CASBEEの届出が必要になる3つの条件

自治体版CASBEEの届出要否は、主に建築地・延べ面積・工事の種類を確認して判断します。ただし、面積基準以外の対象要件や、任意届出・代替評価の扱いにも注意が必要です。

2-1.届出制度を設けている自治体であること

まず、建築地の自治体にCASBEEを用いる届出制度があるかを確認しましょう。住宅・建築SDGs推進センターの一覧には、政令指定都市14市を含む24自治体が掲載されています。条例に基づく義務届出だけでなく、要綱に基づく制度もあります。

大阪府の制度は大阪市・堺市を除く府内、埼玉県の制度はさいたま市・川越市を除く県内が対象です。建築地の提出先も確認しましょう。

自治体名届出義務の対象となる延べ面積の下限
札幌市計画書の届出対象は300平方メートル以上(CASBEE評価は2,000平方メートル以上)
新潟市任意届出(2,000平方メートル以上)
埼玉県2,000平方メートル以上
さいたま市2,000平方メートル以上
千葉市2,000平方メートル以上(要綱に基づく届出)
柏市2,000平方メートル以上
神奈川県2,000平方メートル以上
横浜市2,000平方メートル以上
川崎市2,000平方メートル以上
静岡県2,000平方メートル以上
愛知県2,000平方メートル超
名古屋市2,000平方メートル超
京都府2,000平方メートル以上
京都市2,000平方メートル以上
大阪府2,000平方メートル以上
大阪市2,000平方メートル以上
堺市2,000平方メートル以上
兵庫県2,000平方メートル以上
神戸市2,000平方メートル以上
鳥取県2,000平方メートル以上
広島市2,000平方メートル以上
福岡市5,000平方メートル超(指導要綱に基づく届出)
北九州市2,000平方メートル以上(要綱に基づく届出・代替評価あり)
熊本県2,000平方メートル以上

出典:住宅・建築SDGs推進センター「自治体によるCASBEEの活用」

※延べ面積の下限は各自治体の公式ページ(自治体名のリンク先)の記載にもとづきます

新潟市は2025年4月1日から義務届出を任意届出へ切り替えたため、2,000平方メートル以上の建築物でも提出は任意です。要件は条例や要綱の改正で変わるため、設計着手の時点で担当窓口の最新情報を確かめておくと安心です。

出典:新潟市「CASBEE新潟」

2-2.延べ面積が自治体の定める規模に達していること

多くの自治体では2,000平方メートル以上が対象ですが、愛知県・名古屋市は2,000平方メートル超、福岡市は5,000平方メートル超が主な面積基準です。札幌市は計画書の届出が300平方メートル以上、CASBEEによる評価が2,000平方メートル以上と分かれています。

増築等では工事部分の床面積で判定する場合があります。名古屋市の増築は増築部分で判断し、2,000平方メートル以下の建築物は任意届出も可能です。福岡市では総合設計制度等による許可を受ける建築物も対象となるため、面積だけで判断しないようにしましょう。

出典:名古屋市「建築物環境配慮制度(CASBEE名古屋)の概要」

出典:大阪市「大阪市の建築物環境配慮制度」

出典:札幌市「建築物環境配慮制度(CASBEE札幌)」

2-3.新築・増築など対象となる工事であること

対象工事も自治体ごとに異なります。北九州市の対象は2,000平方メートル以上の新築・増築・改築で、増改築では工事部分の面積が判定基準です。ただし、2025年4月からはCASBEE北九州に加え、ZEB等評価ツールによる届出も選べます。

神戸市では、大規模の修繕・模様替えに係る部分が2,000平方メートル以上の場合も届出が必要です。改修案件では、工事の定義や対象範囲を条例・要綱等で確認しておきましょう。

出典:北九州市「北九州市建築物総合環境性能評価制度について」

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

出典:兵庫県「建築物環境性能評価制度(CASBEE)」

3.自治体版CASBEEの申請手続きの流れ

自治体版CASBEEの申請は、実施設計と並行して自己評価を進め、工事着手や確認申請より前に計画書を提出する流れで進みます。提出期限は確認申請の準備と重なりやすいため、以下の2段階に分けて段取りを確認しましょう。

3-1.設計段階で評価ツールを使った自己評価を行う

最初の手順は、設計段階で自治体の評価ツールを使い、計画中の建築物を自己評価することです。CASBEEの新築向けツールは、設計者が設計期間中に環境性能の指標であるBEE値を高めるための自己評価チェックツールと位置づけられています。

自治体版で使うのは、各自治体が配布する評価ソフトとマニュアルです。版の指定にも注意が必要で、札幌市は2026年7月1日から、CASBEE札幌2024年版による届出のみを受け付けています。

評価の時期は、実施設計と並行させるのが目安です。仕様が固まった後に評価すると、想定より低い結果が出た際に図面や仕様を見直す手戻りが生じます。エネルギー分野では省エネ計算の結果を使う場面もあるため、省エネ適合性判定の準備と同時に進めると作業の重複を減らせます。

出典:住宅・建築SDGs推進センター「CASBEEとは」

出典:札幌市「建築物環境配慮制度(CASBEE札幌)」

3-2.建築物環境計画書と添付書類を作成・提出する

自己評価を終えたら、評価結果をもとに計画書と添付書類を作成し、期限までに提出します。計画書の名称や様式は自治体ごとに異なり、名古屋市は建築物環境計画書届出書(第31号様式)、埼玉県は特定建築物環境配慮計画書(様式第5号)を使います。

名古屋市の添付書類は、評価ツールのメインシートや結果シート、スコアシートなどの入力結果とExcelデータで、図面は不要です。建築主以外の者が作成・届出をする場合は、委任状も必要になります。

提出期限は名古屋市と埼玉県が工事着手の21日前まで、神奈川県は建築確認申請等をしようとする日の21日前までと、起点が自治体によって違います。変更届や完了届の要否・期限も自治体ごとに確認しましょう。名古屋市では工事完了日から15日以内に完了届を提出します。

出典:名古屋市「建築物環境配慮制度(CASBEE名古屋)関連の書類等ダウンロード」

出典:埼玉県「埼玉県建築物環境配慮制度について」

出典:神奈川県「建築物温暖化対策計画書制度(CASBEEかながわ)」

4.自治体版CASBEEの申請に費用はかかる?

自治体版CASBEEの届出では、自治体に支払う申請手数料は原則としてかかりません。評価ソフトやマニュアルは各自治体のウェブサイトから入手できるため、社内で評価と書類作成を担えば、主な負担は作業時間になります。費用が発生するのは、評価や書類作成をコンサルタントなどへ外部委託する場合です。

外部委託の費用は、建築物の規模や評価の難しさ、依頼先によって変わります。専門会社が公開している目安では、延べ面積2,000平方メートル~5,000平方メートルで10万円~30万円前後、5,000平方メートル~10,000平方メートルで20万円~50万円前後です。

任意の評価認証も受ける場合は、代行費用とは別に認証機関へ支払う認証手数料がかかります。見積もりを比べる際は、代行費用のみか認証手数料込みかを確かめましょう。

出典:環境・省エネルギー計算センター「CASBEE費用の相場は?評価認証・申請費用の内訳を徹底解説」

まとめ

自治体版CASBEEの届出要否は、建築地・延べ面積・工事の種類を確認して判断します。計画書の届出とCASBEE評価の対象規模が異なる自治体や、別の評価方法を選べる自治体もあるため、対象書類と期限の確認が欠かせません。設計の初期段階で担当窓口に確認しておきましょう。

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