BELS評価は、建築物の省エネ性能を評価機関が第三者として評価し、ラベルと評価書で表示する制度です。施主からBELS取得を求められても、対象の範囲や表示の単位、使える計算方法が分からなければ、省エネ計算を進められません。申請時期の判断を後回しにすると、仕様が確定した後に計算をやり直す事態も起こります。
当記事では、BELS評価の基本情報、建物オーナーのメリット、計算方法、評価を受けるタイミングを解説します。
1.BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の評価基準とは?
BELS評価は、建築物省エネ法にもとづく表示告示で規定された第三者による評価です。新しい省エネ性能表示制度は令和6年(2024年)4月から施行されました。評価機関へ申請すると、審査を経て省エネ性能ラベルとBELS評価書が交付されます。ここでは、BELS評価の基本情報を、対象・単位・有効期限の3つの観点に分けて解説します。
1-1.評価の対象となる建築物
BELS評価は新築と既存の別を問わず、住宅と非住宅の両方を対象としています。協会のBELS評価業務方法書は、申請者の求めに応じて新築・既築を問わず評価を実施すると定めています。評価の対象は、建築物省エネ法第二条第一号に規定する建築物です。
一方、申請先には制約があります。BELS登録機関ごとに業務区域と業務対象建築物が定められており、住宅のみを業務範囲とする機関もあるため、申請前に確認が必要です。複合建築物の全体なら、住宅と非住宅の両方を業務範囲とする機関へ申請します。
なお、販売・賃貸時の表示制度の努力義務と、BELS評価を受けられる範囲は別です。既存建築物は表示の勧告等の対象外でも、BELS評価は申請できます。
1-2.評価・表示の単位
BELS評価は建物全体に限らず、住棟や住戸、フロアやテナントといった単位でも受けられます。住宅・住棟・住戸・建物・フロア・テナント・建物用途・部分の8区分について、評価対象単位と申請の対象とする範囲は次のように定められています。
| 評価対象単位 | 申請の対象とする範囲 |
|---|---|
| 住宅 | 一戸建ての住宅 |
| 住棟・住戸 | 住宅部分のみで構成された共同住宅や長屋などの全体、その単位住戸 |
| 建物 | 非住宅のみの建築物全体、複合建築物全体 |
| フロア・テナント | 非住宅の任意の階、任意の店舗等部分 |
| 建物用途・部分 | 非住宅の単一用途の部分、複合建築物の住宅部分全体、非住宅の任意の部分 |
出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「BELS評価業務方法書(2026年5月15日版)」表1.4
住宅は、任意の部分を切り出して評価を受けることはできません。フロアとテナントも、建築物全体が1フロアで非住宅用途の場合や、全体が1つの店舗等の場合は選べません。
1-3.評価の有効期限
BELS評価書に有効期限はなく、記載内容は交付した時点の省エネ性能を示します。協会のQ&Aでは、評価書の内容が時間経過による変化を保証しないと明記しており、竣工から年数が経った評価書が最新の性能を示すとは限りません。
運用面で注意が必要なのは、広告表示との関係です。広告に表示した多段階評価が仕様変更で下がった場合は、優良誤認を防ぐためにラベルを再発行して表示し直します。省エネに関する計算が変わらなくても、建築物の名称など記載事項を変えるときは、BELSに係る変更評価申請書の手続きが必要です。
2.BELS評価が建物オーナーにもたらすメリット
建物オーナーにとってのメリットは、販売や賃貸の広告で省エネ性能を第三者評価として示せること、そしてZEB関連の補助事業で第三者認証として使えることの2点です。
2024年4月以降、事業者は新築建築物の販売・賃貸の広告等で省エネ性能ラベルを表示する努力義務が課されており、告示に従った表示をしていないと認められる場合は勧告等の対象となることがあります。対象には新聞・雑誌広告やチラシ、インターネット広告が含まれます。ラベルは自己評価と第三者評価のどちらでも作成できるため、評価機関が審査したBELSのラベルなら、第三者の評価結果であることを買い手や借り手へ示せます。
補助事業での位置づけも明確にされており、例えば環境共創イニシアチブのZEB実証事業では、交付申請時に作成する事業実施スケジュールへ「BELS等の第三者認証取得日」を明示することが求められ、BELS評価費用も経費の内訳項目に含まれます。ZEHマークやZEH-Mマークの表示を希望する場合は、省エネ基準への適合が前提です。
3.BELS評価で使う計算方法
BELS評価で使える手法は、建物が非住宅か住宅かで分かれます。どの手法を用いるかで入力する情報と多段階表示の結果が変わるため、基本設計の段階で確認しておきましょう。ここでは、BELS評価で使う計算方法を、非住宅と住宅の2つに分けて解説します。
3-1.非住宅の計算方法
非住宅の評価手法には、通常の計算法、モデル建物法、BEST省エネ基準対応ツールの3つがあります。
・通常の計算法
標準入力法と主要室入力法があり、室や設備の仕様を入力して一次エネルギー消費量を算定します。
・モデル建物法
建物用途ごとのモデルへ置き換える簡易な手法で、BEIm値が表示されます。
・BEST省エネ基準対応ツール
各機関の審査体制が整備され次第に運用が始まる手法です。
出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「BELS評価業務方法書(2026年5月15日版)」表1.1
モデル建物法(小規模版)は、BELS評価書作成プログラムが対応しておらず、BELS申請には使えません。複合建築物全体の評価では、非住宅部分の計算プログラムは標準入力法に限られます。
3-2.住宅の計算方法
住宅の評価手法は、性能基準と仕様基準、誘導仕様基準を使い分けます。性能基準では計算プログラムへ入力して評価し、仕様基準と誘導仕様基準では告示で定める仕様への適合を確認します。断熱性能に仕様基準、一次エネルギー消費量に性能基準という組み合わせも可能です。
ZEH-Mの表示を希望し、かつ共用部分が存在する場合は、住棟評価で共用部分を除外できません。
4.BELS評価を受けるタイミング
BELSの申請時期に決まりはなく、着工前後でも竣工後でも申請できます。ただし協会のQ&Aは、評価の正確性の観点から、設備機器等の仕様が確定した時点での評価を推奨しています。時期を左右するのは、広告の予定と省エネ適合性判定の進み方です。ここでは、BELS評価を受けるタイミングを、3つの場面に分けて解説します。
4-1.設計段階で評価を受ける
設計段階での申請は、販売や賃貸の広告へ早い時期から省エネ性能を表示したい案件に向きます。国土交通省は、予告広告も表示制度の対象としつつ、仕様等の変更が想定される場合は仕様確定後の表示でも差し支えないとしています。
設備機器の仕様が固まる前に申請すると、仕様が変わったときに変更の手続きが必要です。入居テナントが未定で評価対象の設備機器がない場合は、ZEBマークに関する表示ができません。
4-2.省エネ適判とあわせて評価を受ける
省エネ適合性判定を受けた機関と同じ機関へBELSを申請すると、適合判定通知書の写しなどで申請図書の一部を省略できます。省略できる書類は次の3通りです。
- 計画書(施行規則様式第一)の写しと、適合判定通知書(同規則様式第七)の写し
- 変更計画書(同規則様式第二)の写しと、適合判定通知書の写し
- 軽微変更該当証明申請書の写しと、軽微変更該当証明書の写し
図書省略は計画が確定した段階を前提とし、建築基準法の完了検査申請時か完了検査後の申請が最も効率的と想定されています。適合判定機関と同一の機関への申請が条件のため、申請先で扱いを確認してください。
4-3.竣工後に評価を受ける
竣工後でもBELSは申請できます。設備機器等の仕様が確定した後の申請なら、評価のやり直しが起きにくくなります。
ただし評価の中身は設計図書にもとづく計算です。既存建築物の運用実績値は、運用状況で一次エネルギー消費量の値が大きく異なるため評価の範疇に含まれず、参考情報欄への記載にとどまる点には注意しましょう。
まとめ
BELS評価は、新築と既存を問わず住宅と非住宅を対象とする第三者評価で、住棟やフロアなど8つの単位から選べます。評価書に有効期限はない一方、広告表示した多段階評価が下がればラベルの再発行が必要です。計算方法は非住宅と住宅で分かれ、選んだ手法が多段階表示の結果まで左右します。申請時期に決まりはなく、設備機器等の仕様が確定した段階での評価が推奨されます。
省エネ計算と申請の準備に手が回らない場合は、外部へ任せる選択も可能です。JNS建築事務所の「ワンデイ検討」なら、平面図をもとに断熱の厚さと種類、設備仕様を確認できます。省エネ適合性判定やBELS、ZEH、ZEBの申請まで相談できるため、ぜひご活用ください。


