コラム 2026.10.27

一次エネルギー消費量の計算方法とは?BEIの求め方と基準値を解説

一次エネルギー消費量の計算方法とは?BEIの求め方と基準値を解説

建物の省エネ性能を確認する上で、一次エネルギー消費量は重要な指標です。ただし、電気やガスの使用量をそのまま足すわけではなく、一次エネルギーに換算した上で、暖房・冷房・換気・給湯・照明などの消費量をまとめて評価します。さらに、設計値と基準値の比較にはBEIが使われ、住宅と非住宅では計算条件や評価方法にも違いがあります。

省エネ基準への適合確認や設計の見直しを行うには、計算の仕組みだけでなく、計算プログラムへの入力方法や結果の見方も理解しておくことが大切です。当記事では、一次エネルギー消費量の基本からBEIの求め方、住宅・非住宅の計算方法、計算プログラムの手順、消費量を抑える設計のポイントまで解説します。

1. 一次エネルギー消費量とは?

一次エネルギー消費量は、建物で使う電気やガスなどを共通の熱量に換算し、省エネ性能を評価するための指標です。ここでは、数値の考え方と設計値・基準値の違いを解説します。

出典:国土交通省「ラベル項目の解説」

1-1. 建物で使うエネルギーを一次エネルギーに換算して表す

建物では、冷暖房、換気、照明、給湯など、用途によって異なる種類のエネルギーを使います。一次エネルギー消費量は、そのような建物で使う電気やガスなどのエネルギーを、一次エネルギーに換算して合計した値です。

そのままでは単位が異なり比較しにくいため、国が定める換算係数を使って熱量にそろえます。単位はJ(ジュール)で表し、年間にどれだけのエネルギーを使う建物かを共通の尺度で確認できます。住宅では家電など、非住宅では事務機器などによる消費も「その他一次エネルギー消費量」として扱われます。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ガイドライン」

1-2. 設計値と基準値を比べて省エネ性能を評価する

建物の省エネ性能は、実際の設計仕様から求める「設計一次エネルギー消費量」と、標準的な仕様を基に求める「基準一次エネルギー消費量」を比べて評価します。設計値が基準値に対して小さいほど、省エネ性能が高いことを示します。

比較するときは、地域区分や床面積、室の用途などの条件をそろえます。設計値には、外皮性能や暖冷房・空調、換気、照明、給湯、非住宅では昇降機などの設備性能が反映され、適用する基準に応じて太陽光発電などによる削減量も考慮されます。この値は、省エネ基準への適合やBEIを確認するための基本となります。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ガイドライン」

2. 一次エネルギー消費量を計算する基本の流れ

一次エネルギー消費量は、設備ごとの消費量を一次エネルギーに換算して合計し、発電設備などによる削減分を反映して求めます。ここでは、計算の基本的な流れを3つに分けて解説します。

出典:国土交通省「住宅事業建築主が新築する戸建住宅に係る一次エネルギー消費量の計算方法の概要」

出典:国土交通省「住宅省エネルギー技術講習テキスト」

2-1. 設備ごとに年間のエネルギー消費量を求める

一次エネルギー消費量は、まず暖房・冷房・換気・給湯・照明など、設備の用途ごとに年間のエネルギー消費量を求めます。住宅では、建設地域や外皮性能、各室の面積・気積、設置する機器の種類や容量などを計算条件として使用します。

設備によって計算方法は異なり、暖房・冷房では室ごとの期間負荷や機器の効率などを基に消費量を算定します。機器の使用時間や運転モードにはあらかじめ定められた条件を用いるため、実際の住み方や使用状況をそのまま計算するわけではありません。こうして条件をそろえて計算することで、建物や設備の仕様によるエネルギー消費量の違いを比較しやすくなります。また、用途別に算定した値を確認すれば、どの設備の消費が大きいかも把握しやすくなります。

2-2. 一次エネルギー換算係数で熱量に換算する

設備ごとのエネルギー消費量を求めたら、一次エネルギー換算係数を使って熱量に換算します。電気やガスなどは使用量の単位が異なるため、そのままでは合計できません。そこで、各エネルギーをGJなどの共通単位にそろえ、建物全体でどれだけ一次エネルギーを使うかを比較できるようにします。

たとえば暖房では、室ごとの負荷や機器の効率から消費量を求め、電気を使う場合は電力の一次エネルギー換算係数を反映して年間の一次エネルギー消費量を算定します。換算後の値はGJ/年などで表されます。用途ごとに同じ尺度へ換算してから合計することで、電気・ガスなど異なるエネルギー源を使う設備も、建物全体の消費量としてまとめて評価できます。

2-3. 創エネ設備による削減量を差し引く

太陽光発電などの創エネ設備がある場合は、設備による削減量を一次エネルギー消費量の計算に反映します。住宅の計算では、暖房・冷房・給湯・換気・照明の一次エネルギー消費量を合計し、エネルギー利用効率化機器による削減量を差し引いて全体の消費量を求めます。

太陽光発電については、発電量のうち住宅内で使われる自家消費分が計算結果に反映されます。また、エネルギー利用効率化機器には太陽光発電のほか、燃料電池コージェネレーションやガスエンジンコージェネレーションなどがあります。設備を設置しただけで一律に同じ量を差し引くのではなく、所定の計算方法で求めた削減量を反映する点を押さえておきましょう。これにより、設備導入による省エネ効果を数値に反映できます。

3. 一次エネルギー消費量から求めるBEIとは?

BEIは、建築物の一次エネルギー消費性能を示す指標で、数値が小さいほど省エネ性能が高いと評価されます。ここでは、BEIの計算方法と評価の考え方を解説します。

3-1. 設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割って求める

BEIは、「その他一次エネルギー消費量を除いた設計一次エネルギー消費量÷その他一次エネルギー消費量を除いた基準一次エネルギー消費量」で求める指標です。設計一次エネルギー消費量は、実際に採用する断熱・設備仕様をもとに算出した年間の一次エネルギー消費量です。一方、基準一次エネルギー消費量は、同じ地域や床面積などの条件で、国が定める基準仕様を用いた場合の消費量を表します。つまり、同じ条件の建物について「基準となる建物」と「設計した建物」を比べる考え方です。

たとえばBEIが0.8なら、設計値が基準値の80%であることを示します。数値が1.0より小さいほど基準より一次エネルギー消費量が少なく、省エネ性能が高いと判断できます。この比率から、省エネ性能の差を把握できます。なお、実際の適否は建物用途や規模などに応じた基準値で確認します。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ガイドライン」

3-2. BEIの計算では家電などの「その他」の消費量を除いて評価する

BEIを計算するときは、家電やOA機器などによる「その他一次エネルギー消費量」を、設計値と基準値の双方から除いて評価します。住宅では家電、非住宅では事務機器などが代表例です。国土交通省の資料では、この「その他」は設計一次エネルギー消費量と基準一次エネルギー消費量に同じ値として加算されます。

そのまま比率を求めると、設計による省エネ性能の違いがBEIに表れにくくなります。このため、BEIでは「その他」を除外し、断熱や空調、換気、照明、給湯など、設計によるエネルギー消費性能をより反映した指標としています。なお、一次エネルギー消費量そのものには「その他」も含まれるため、建物全体の消費量とBEIの計算対象は明確に区別して理解する必要があります。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ガイドライン」

3-3. 省エネ基準やZEH・ZEBの判定に使われる

BEIは、省エネ基準への適合確認や、ZEH・ZEBなどの省エネ性能を示す基準の判定に使われます。現在、住宅の省エネ基準では、一次エネルギー消費量についてBEI1.0以下が基本です。ZEH水準に相当する一次エネルギー消費量等級6は、BEI0.8以下とされています。

非住宅でもBEIが用いられ、省エネ基準の基準値は建物の規模や用途によって異なります。ZEBでは、省エネによる一次エネルギー消費量の削減率などをBEIで確認し、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedなどを判定します。ただし、ZEH・ZEBはBEIだけで決まるものではなく、外皮性能や再生可能エネルギーなど、それぞれの要件も満たす必要があります。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく 建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ガイドライン」

4. 住宅と非住宅で異なる一次エネルギー消費量の計算方法

住宅と非住宅では、一次エネルギー消費量の計算条件や評価方法が異なります。住宅は暮らし方、非住宅は建物用途などを想定します。ここでは、それぞれの計算方法の違いを解説します。

4-1. 住宅の計算方法

住宅では、標準的な居住者の生活スケジュールを設定し、その条件に沿って一次エネルギー消費量を計算します。平日・休日などについて、あらかじめ定められた標準的な生活スケジュールを用いて計算する点が特徴です。

計算では、住宅の地域区分や床面積、外皮性能、暖冷房・換気・給湯・照明設備などの仕様を反映します。また、床面積は「主たる居室」「その他の居室」「非居室」に分けて扱われます。これらの条件をそろえて評価することで、居住者ごとの暮らし方に左右されず、住宅そのものの断熱性能や設備性能による差を比較しやすくしています。住宅の一次エネルギー消費量は、実際の光熱費を予測する値ではなく、省エネ性能を共通条件で評価するための計算値です。

出典:国土交通省「住宅事業建築主が新築する戸建住宅に係る一次エネルギー消費量の計算方法の概要」

4-2. 非住宅建築物の計算方法

非住宅建築物では、事務所やホテル、病院、店舗、学校などの建物用途や室用途を踏まえて一次エネルギー消費量を計算します。計算方法は、入力情報の細かさや建物規模に応じて、主に次の3つから選びます。

計算方法概要
標準入力法すべての室ごとに床面積、外皮性能、設備機器などを入力する、最も詳細な計算方法です。
モデル建物法建物全体の外皮性能や主たる室用途の設備情報を入力し、用途ごとに定められたモデル建物を使って計算します。
モデル建物法(小規模版)非住宅部分の床面積が300m2未満の場合に利用でき、モデル建物法より入力項目を絞った方法です。

標準入力法は詳細に評価できる一方、入力作業が多くなります。モデル建物法は入力の手間を抑えやすく、小規模版は利用できる建物規模や評価対象となる設備に制限があります。

出典:国土交通省「令和7年度 建築物省エネ法 講習テキスト」

5. 計算プログラムで一次エネルギー消費量を求める手順

一次エネルギー消費量は、計算プログラムに建物の基本情報や外皮・設備仕様を入力して求めます。ここでは、入力から計算結果を確認し、基準への適合を判断するまでの流れを解説します。

5-1. 建物の基本情報と地域区分を入力する

最初に、建物の所在地や床面積などの基本情報と、所在地に対応する地域区分を入力します。地域区分は全国を気候条件に応じて分けたもので、一次エネルギー消費量の計算に用いる外気温などの条件に関わります。住宅では住宅の建て方や床面積、非住宅では建物用途なども設定します。

地域区分は都道府県だけで決まるとは限らず、市区町村ごとに定められているため、所在地に対応する区分を確認して選択します。太陽光発電を評価する場合には、年間日射地域区分などの入力が必要になることもあります。基本情報を誤ると、その後の外皮や設備の計算条件にも影響するため、設計図書や確認申請の情報と照合しながら、入力内容を1つずつ確認することが大切です。

5-2. 外皮の断熱性能を入力する

次に、外壁や屋根、窓などの外皮性能を入力します。住宅では、外皮平均熱貫流率のUA値や冷房期の平均日射熱取得率ηAC値などを用いて、熱の逃げやすさや日射熱の入りやすさを反映します。非住宅では、空調の一次エネルギー消費量を評価する場合などに外皮の仕様を入力します。

入力する内容は計算方法によって異なります。たとえば非住宅のモデル建物法では、外壁や屋根、窓の断熱仕様などを入力し、空調に必要なエネルギーの計算へ反映します。断熱材の種類や厚さ、窓の性能などは設計図書と一致させることが重要です。外皮性能は暖房・冷房の負荷に関係するため、設備仕様を入力する前に、入力した数値や仕様が正しいか必ず十分に確認しましょう。

5-3. 空調・給湯・照明などの設備仕様を入力する

外皮の入力後は、暖房・冷房、換気、給湯、照明などの設備仕様を入力します。プログラムでは、設備の種類だけでなく、能力や効率、台数など、一次エネルギー消費量の算定に必要な情報を設定します。太陽光発電やコージェネレーション設備を評価する場合は、それらの仕様も入力します。

入力項目は住宅と非住宅、採用する計算方法によって異なります。たとえば空調では熱源機器の能力や効率、照明では消費電力や制御機能、給湯では熱源機器の種類や性能などを反映します。実際に採用する機器の性能値を確認できる場合は、設計図書や製品仕様書を基に正確に入力します。設備性能の違いは設計一次エネルギー消費量に直接反映されるため、入力漏れや選択ミスにも注意が必要です。

5-4. 計算結果でBEIと基準への適合を確認する

必要な項目を入力したら計算を実行し、表示されたBEIと基準への適合状況を確認します。BEIは、設計値と基準値の双方からその他一次エネルギー消費量を除き、その比として算出する指標です。計算プログラムでは、入力した外皮や設備の仕様を基に設計値と基準値を算定し、BEIなどの計算結果を表示します。

ただし、適合に必要なBEIの水準は建物の種類や用途、規模、適用する基準によって異なります。住宅の省エネ基準では一次エネルギー消費性能に加えて外皮性能の基準も確認が必要です。非住宅でも、2026年4月から中規模建築物の基準が用途別に引き上げられています。そのため、BEIの数値だけを見るのではなく、計算結果に示された適用基準と判定結果まで確認しましょう。

出典:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法(Ver.3.10)における更新の内容」

6. 一次エネルギー消費量を抑える設計のポイント

一次エネルギー消費量を抑えるには、建物の熱負荷を減らし、設備を効率よく使い、創エネを組み合わせることが重要です。ここでは、設計時に押さえたい4つのポイントを解説します。

6-1. 断熱性能を高めて冷暖房の負荷を減らす

断熱性能を高めると、屋外との熱の出入りを抑えられ、冷暖房に必要なエネルギーを減らしやすくなります。外壁や屋根・天井、床に適切な断熱材を設けるほか、窓には断熱性能の高いサッシや複層ガラスなどを採用します。

特に窓は熱の出入りに関わるため、断熱だけでなく日射の入り方も考慮することが大切です。地域の気候や方位に応じて、庇や日射遮蔽部材も組み合わせると、夏の冷房負荷を抑えやすくなります。外皮性能を高めることは、設備を高効率化する前の基本的な省エネ対策です。

6-2. 高効率な空調・給湯設備を採用する

空調や給湯には、少ないエネルギーで必要な冷暖房や給湯を行える高効率な機器を採用します。空調設備では機器の効率だけでなく、建物の負荷に対して能力が過大にならないよう、容量や台数を適切に選ぶことも重要です。

給湯設備では、ヒートポンプ給湯機や潜熱回収型ガス給湯器など、高効率な機器を選ぶ方法があります。設備の種類によって適した方式は異なるため、建物用途や給湯量、地域条件を踏まえて選定します。断熱で負荷を減らした上で設備効率を高めると、一次エネルギー消費量を抑えやすくなります。

6-3. 照明や空調の制御方式を工夫する

照明や空調は、室内の利用状況に合わせて運転を制御すると、不要なエネルギー消費を抑えられます。照明では、人感センサーによる在室検知や、昼光に応じて明るさを調整する制御を採用すると、必要以上の点灯を減らせます。

空調では、室内の負荷や稼働状況に応じて機器の出力を調整する制御が有効です。非住宅では、送風量や水量を負荷に合わせて変える制御も省エネにつながります。採用した制御が一次エネルギー消費量の計算にどう反映されるかは、使用する計算方法や入力条件を確認する必要があります。

6-4. 太陽光発電などの創エネ設備を導入する

太陽光発電などの創エネ設備を導入すると、建物で使用する電力の一部を再生可能エネルギーで賄えます。一次エネルギー消費性能の評価でも、適用する基準や計算方法に応じて発電量が反映されるため、消費量の収支を改善する手段になります。

計画時は、屋根などの設置面積や方位、日射条件を踏まえて発電量を見込みます。発電した電力の扱いは評価制度によって異なり、すべての発電量が一律に差し引かれるわけではありません。まず断熱や高効率設備で消費量を減らし、そのうえで創エネを組み合わせることが基本です。

まとめ

一次エネルギー消費量は、建物で使う電気やガスなどを共通の熱量に換算し、建物全体の省エネ性能を評価するための指標です。設備ごとの消費量を一次エネルギーに換算し、必要に応じて太陽光発電などによる削減量を反映して求めます。設計値と基準値の関係はBEIで確認でき、数値が小さいほど省エネ性能が高いと評価されます。

計算では、住宅と非住宅で使用する条件や方法が異なるため、建物の種類に合った計算方法を選ぶ必要があります。また、計算プログラムでは基本情報、外皮性能、設備仕様を正しく入力し、BEIや基準への適合状況まで確認することが重要です。一次エネルギー消費量を抑えるには、断熱性能の向上、高効率設備、適切な制御、創エネ設備を組み合わせて検討しましょう。