CASBEEについて調べると、S・A・B+といったランクを目にしますが、すべての評価ツールで同じ基準が使われているわけではありません。CASBEE-建築とCASBEE-不動産、CASBEE-ウェルネスオフィスでは、ランクの区分や評価方法が異なります。
特にCASBEE-建築では、建物内の快適さや使いやすさだけでなく、省エネや資源利用、周辺環境への負荷なども含めて総合的に評価します。高いランクを目指す場合は、評価の仕組みに加えて、自治体の制度や必要な資料、第三者認証との違いも理解しておくことが大切です。
当記事では、CASBEEのランクの種類と評価基準、高評価を取得するメリット、A・Sランクを目指す進め方を分かりやすく解説します。
1.CASBEEのランクは評価ツールによって異なる
CASBEEには、建物の用途や評価目的に応じて複数の評価ツールがあり、ランクの数や決まり方も同じではありません。ここでは、代表的な3つのツールごとにランクの違いを整理します。
1-1.CASBEE-建築はS・A・B+・B-・Cの5段階
新築建築物を評価する「CASBEE-建築(新築)」の現行版は2024年版で、評価結果はS・A・B+・B-・Cの5段階で示されます。Sが最も高く、A、B+、B-、Cの順に続きます。ランクは、環境品質Qと環境負荷Lから求めるBEEを基本に判定し、SランクではBEEの基準に加えてQの基準も満たす必要があります。
簡単に言えば、建物の快適さや機能性を高めながら、エネルギー消費など外部への環境負荷を抑えられているほど、高いランクを得やすい仕組みです。現行の「CASBEE-建築(新築)2024年版」は2025年3月に公開されています。
1-2.CASBEE-不動産はS・A・B+・Bの4段階
CASBEE-不動産の現行版は2024年版で、評価ランクはS・A・B+・Bの4段階です。CASBEE-建築にあるB-とCはありません。必須項目への適合を前提として、評価結果は78点以上でS、66点以上でA、60点以上でB+となり、必須項目を満たす場合はB以上と評価されます。
このツールは、竣工後1年以上の建物を対象に、不動産として評価しやすいよう、エネルギー、水、資源利用・安全、生物多様性・敷地、屋内環境などを採点します。2024年版ではホテルも対象用途に加わりました。同じ「A」「B+」という記号が使われていても、CASBEE-建築とは評価方法が異なるため、ランクだけを直接比べないことが大切です。
1-3.CASBEE-ウェルネスオフィスも5段階で評価する
CASBEE-ウェルネスオフィスは、S・A・B+・B-・Cの5段階で評価します。現行版は2025年8月に公開された「2025年版」です。2025年版では、75点以上でS、65点以上75点未満でA、50点以上65点未満でB+、40点以上50点未満でB-、40点未満でCとなります。
CASBEE-建築との大きな違いは、BEEを使わない点です。働く人の健康性・快適性、安全・安心性、知的生産性向上などに関する項目を評価し、その総合得点からランクを決めます。そのため、同じ5段階でも「建物の環境効率」と「働く人のための環境」という評価の目的を分けて理解しましょう。
2.CASBEE-建築のランクはBEEで決まる
CASBEE-建築では、建物の環境品質Qと環境負荷LからBEEを求め、その値でランクを判定します。ここでは、Q・LR・BEEの意味と関係を順に解説します。
2-1.Qでは室内環境・サービス性能・敷地内の室外環境を評価する
Qは、建物の中や敷地内が、利用する人にとってどれだけ快適で使いやすいかを評価する指標です。CASBEE-建築では、Qを「Q1 室内環境」「Q2 サービス性能」「Q3 室外環境(敷地内)」の3分野に分けて評価します。
| 評価分野 | 主な評価内容 |
|---|---|
| Q1 室内環境 | 騒音、温度、明るさ、空気の質など |
| Q2 サービス性能 | 建物の使いやすさ、安全性、耐久性、将来の変更への対応しやすさなど |
| Q3 室外環境(敷地内) | 緑や生き物への配慮、景観との調和、地域の快適さへの配慮など |
このようにQでは、省エネ性能ではなく、建物や敷地そのものの「環境品質」を幅広く確認します。利用者が快適に過ごせるか、長く使いやすい建物になっているか、周辺環境にも配慮されているかといった点を評価し、Qの値が高いほど環境品質も高いことを表します。
2-2.LRではエネルギー・資源・敷地外環境への負荷低減を評価する
LRは、建物による環境への負担をどれだけ減らせているかを評価する指標です。CASBEE-建築では、「LR1 エネルギー」「LR2 資源・マテリアル」「LR3 敷地外環境」の3分野に分けて評価します。
| 評価分野 | 主な評価内容 |
|---|---|
| LR1 エネルギー | 断熱性能、自然エネルギーの利用、省エネ設備、効率的な運用など |
| LR2 資源・マテリアル | 水資源の保護、資源使用量の削減、再生材料の利用など |
| LR3 敷地外環境 | 地球温暖化への配慮、騒音や振動、周辺環境への影響低減など |
LRは「Load Reduction」の略で、環境負荷を減らす取り組みを評価する考え方です。点数が高いほど、エネルギーや資源の消費、周辺環境への影響を抑える工夫が充実していることを示します。なお、BEEの計算で分母に用いるのはLRそのものではなく、LRをもとに求める環境負荷Lです。
2-3.BEEはQをLで割って算出する
BEEは、建物の環境品質Qを環境負荷Lで割って求める「建築物の環境効率」を示す指標です。計算式は次の通りです。
BEE = Q ÷ L
Qは建物や敷地の快適さ・使いやすさなどを表し、Lは建物が外部へ与える環境負荷を表します。そのため、Qが高くLが低いほどBEEは大きくなり、環境効率の高い建物と評価されます。
たとえば、Qが60、Lが30の場合は「60÷30=2.0」となり、BEEは2.0です。反対に、同じQが60でもLが60ならBEEは1.0になります。CASBEE-建築では、BEEを基本にS、A、B+、B-、Cの5段階でランクを判定し、SランクではQの条件も確認します。つまりBEEは、「建物の環境品質」と「環境への負担」のバランスを1つの数値で表す指標と考えると理解しやすいでしょう。
3.CASBEEで高いランクを取得するメリット
CASBEEで高いランクを取ると、建物の環境性能を示しやすくなり、自治体制度や不動産評価で役立つ場合があります。ここでは、高評価を取得する主なメリットを3つ紹介します。
3-1.建物の環境性能を対外的に説明しやすくなる
CASBEEで高いランクを取得すると、建物が環境にどの程度配慮しているかを、第三者にも説明しやすくなります。省エネだけでなく、室内の快適さや資源の使い方、周辺環境への配慮などを共通の基準で評価するため、「環境に配慮した建物です」と説明するだけより、評価結果を示したほうが特徴を伝えやすくなります。
国土交通省も、CASBEEは建築物の環境性能をアピールする目的などで活用されていると説明しています。たとえば、建物の所有者が入居希望者や取引先、投資家などへ環境への取組を伝える場面で、ランクや評価結果を共通の評価基準に沿った材料として使えます。他の物件と比較する材料にもなります。ただし、高ランクだから必ず賃料や資産価値が上がるという意味ではありません。
3-2.一部の自治体では評価結果が表彰や制度要件に使われる
自治体によっては、CASBEEの評価結果が表彰の対象や、建築に関する制度を利用するための条件として使われています。たとえば大阪市では、一定規模以上の建築物についてCASBEE大阪みらいによる評価を求め、評価結果の公表やラベル表示、優れた建築物の表彰も行っています。
さらに大阪市の総合設計制度では、一定規模の建築物にB+以上の評価を求めています。総合設計制度は、公開空地などを設けることで容積率や高さ制限の緩和を受けられる制度です。このように、CASBEEは単に建物へ「成績」を付けるだけでなく、自治体のまちづくり制度と結び付く場合があります。必要なランクや条件は自治体ごとに異なるため、計画地のルールは事前に確認が必要です。
3-3.CASBEE-不動産は不動産評価や情報開示に活用できる
CASBEE-不動産は、建物の環境性能を不動産の評価に活用しやすくするための仕組みです。CASBEE-建築よりも不動産評価との関係が強い項目に絞って評価するため、建物を保有・運用する事業者が、物件の環境面の特徴を整理して示す際に活用できます。国土交通省も、不動産評価への活用を目的に開発された制度と説明しています。
評価結果を示せば、投資家や金融機関、テナントなどに対して、その物件が省エネや資源利用などにどの程度配慮しているかを共有しやすくなります。また、環境や社会への取組を外部へ説明する際の材料にもなります。ただし、CASBEEの評価だけで不動産価格や投資判断が決まるわけではなく、立地や収益性など他の条件とあわせて見られる点には注意が必要です。
4.CASBEEでA・Sランクを目指すときの進め方
CASBEEでA・Sランクを目指すには、評価前の準備が重要です。使うツールや自治体のルール、必要資料を早めに整理しましょう。ここでは、実務の進め方を順に解説します。
4-1.対象ツールと自治体のルールを最初に確認する
最初に、建物の種類や計画内容に合うCASBEEの評価ツールと、建設地の自治体が定めるルールを確認します。CASBEEには新築、既存、改修、戸建など複数のツールがあり、自治体によって使用する版や独自の評価ソフトが指定される場合があります。
たとえば大阪市では、一定規模以上の新築・増築・改築に「CASBEE大阪みらい」を使い、建築物環境計画書を届け出る制度があります。対象面積や提出時期、必要な書類も自治体ごとに異なるため、設計を進めてから確認するとやり直しが生じる可能性があります。計画の初期段階で、自治体の公式サイトや担当窓口から対象制度、使用ソフト、届出期限などを早めに確認しておくことが大切です。
4-2.目標ランクと現在のスコア差を設計初期に確認する
A・Sランクを目指す場合は、設計の早い段階で評価ソフトに計画内容を入力し、目標ランクまでどの程度足りないかを確認しましょう。CASBEEでは、各評価項目の点数からQとLRを求め、最終的にBEEの値によってS、A、B+、B-、Cのランクが決まります。
そのため、現在の評価がB+であれば、どの項目を改善すればAに近づくのかをスコアシートやグラフで確認すると考えやすくなります。たとえば、断熱や設備の省エネ性能だけでなく、室内環境、維持管理のしやすさ、緑化なども評価に関わります。後半で大きく設計を変える負担を避けるためにも、初期案の時点で試算し、改善できる項目と必要な対策を設計者と整理しておくことが重要です。
4-3.評価根拠となる図面・計算資料を並行して整理する
CASBEEの評価と並行して、点数の根拠になる図面や計算資料を整理しておくことが大切です。評価では、単に「省エネに配慮している」と書くだけではなく、評価項目に応じて設計内容を確認できる資料が必要になります。自治体への届出でも、評価内容が分かる図書の添付を求められる場合があります。
たとえば、断熱性能や設備性能を確認できる計算書、平面図・配置図、緑化計画、仕上げや設備の仕様が分かる資料などです。設計変更があれば、評価ソフトの入力内容と図面・計算書の内容も合わせて更新します。最後にまとめて資料を探すと、根拠が不足したり内容が食い違ったりしやすいため、評価した項目ごとに対応する資料を決め、設計の進行と一緒に整理すると確認がしやすくなります。
4-4.社内対応が難しい場合はCASBEE評価の専門家へ相談する
社内だけで評価を進めるのが難しい場合は、CASBEEの評価実務に詳しい専門家へ相談する方法があります。CASBEEには評価員登録制度があり、建築物の評価を扱う「CASBEE建築評価員」という資格があります。自治体の制度によっては、評価員による評価が手続きに関わる場合もあります。
たとえば大阪市では、環境性能を広告などに表示するラベリング制度について、CASBEE建築評価員が評価した建築物環境計画書などの届出を求めています。専門家には、評価項目の読み取りやスコアの試算、根拠資料の整理などを相談できます。ただし、依頼すればA・Sランクになるわけではありません。実際の設計や設備性能を確認しながら、必要な改善策を一緒に検討することが重要です。
5.CASBEEランクに関するよくある質問
CASBEEのランクや評価認証には、初めて利用する方が迷いやすい決まりがあります。ここでは、認証条件やSランク、自己評価、使用ソフトに関する疑問を分かりやすく解説します。
5-1.B+以上でないとCASBEE建築評価認証は受けられない?
CASBEE建築評価認証は、B+以上でなければ申請できない制度ではありません。公式の制度要綱では、CASBEE-建築(新築・既存・改修)で評価した原則延べ面積300m2以上の建築物が認証対象とされ、B+以上という最低ランクの条件は設けられていません。
認証では、申請した評価内容や根拠資料を第三者機関が審査し、評価が適切かを確認します。公式の認証票もS、A、B+だけでなく、B-、Cの各ランクを表示できる形式です。したがって、B-やCだから認証を受けられないという仕組みではありません。ただし、申請図書に不備がある場合などは審査を進められないため、ランクとは別に、対象建物や提出書類などの申請要件を確認する必要があります。
5-2.Sランクはすべての評価項目で最高点が必要?
Sランクを取るために、すべての評価項目で最高点を取る必要はありません。CASBEE-建築は、室内環境やサービス性能、省エネルギー、資源への配慮など多数の項目を採点し、それぞれの重みを反映してQやLR、BEEを算出する仕組みです。
実際に2024年版でSランクの評価認証を受けた品川区新総合庁舎は、BEEが3.5ですが、中項目にはQ1「室内環境」4.1、LR3「敷地外環境」3.6など、5点未満の評価があります。つまり、一部の項目が最高点でなくても、建物全体として高い環境品質と負荷低減を両立し、Sランクの基準を満たせばS評価になります。個々の項目をすべて5点にすることが条件ではなく、Sランクは建物全体の評価結果で決まります。
5-3.自己評価とCASBEE評価認証は同じ?
同じではありません。自己評価はCASBEEの評価ツールを使って建物の環境性能を評価するもので、CASBEE評価認証は、その評価内容が適切かを第三者機関が審査して認証する制度です。自分たちで評価ソフトを使ってSやAという結果が出ても、それだけで評価認証を取得したことにはなりません。
IBECsは、認証を受けていない評価結果を第三者に示す場合、「自己評価による結果」であることを明記するよう案内しています。また、CASBEE自主評価登録制度は、CASBEE評価員が行った未認証の評価結果をIBECsに登録・公表する制度であり、IBECsが評価内容を認証する制度ではありません。第三者による確認を受けた結果として示したい場合は、認定された認証機関への申請が必要です。
5-4.CASBEE-建築ではどの評価ソフトを使えばよい?
新築建物を新たに評価する場合は、「CASBEE-建築(新築)2024年版」の評価ソフトを使います。日本サステナブル建築協会では、2025年3月31日に2024年版を公開し、2026年8月31日には2026年9月時点で最新版となる評価ソフトver1.24を公開しています。
ただし、建物の状態によって使うソフトは変わります。竣工後1年以上の建物を現在の性能で評価する場合は「CASBEE-建築(既存)」、大規模改修の計画を評価する場合は「CASBEE-建築(改修)」を使います。自治体への届出では、自治体版CASBEEや指定された版を使う場合もあるため、評価を始める前に建設地の自治体が定める最新ルールも確認してください。
まとめ
CASBEEを正しく活用するには、まず何を評価するためのツールなのかを確認することが大切です。CASBEE-建築ではBEEをもとに5段階でランクを判定しますが、CASBEE-不動産などでは評価方法が異なります。また、高いランクは建物の環境性能を説明する材料になり、自治体の制度や不動産分野で活用できる場合があります。
A・Sランクを目指すなら、設計の初期段階からスコアを確認し、改善する項目と評価根拠となる資料を整理しておきましょう。自治体によって使用する評価ソフトや届出条件が異なる場合もあります。自己評価と第三者による評価認証も別の仕組みなので、目的と計画地のルールを確認した上で、必要に応じて専門家へ相談しながら進めることが重要です。


