CASBEE 2026.10.27

CASBEE-建築(新築)とは?建築物の採点基準と評価手順を解説

CASBEE-建築(新築)とは?建築物の採点基準と評価手順を解説

CASBEE-建築(新築)は、戸建住宅を除く建築物を対象に、新築時の設計内容から環境性能を5段階で格付けする評価ツールです。届出で評価書を求められても、どの項目がどう採点されるのか分かりにくいという声は少なくありません。採点の構造と手順をつかめば、設計のどこを詰めるべきかが見えてきます。

当記事では、CASBEE-建築(新築)の位置づけ、採点基準の考え方、2024年版の改定点、評価の進め方、高評価のポイントを解説します。届出や認証の準備を進める際にお役立てください。

1. CASBEE-建築(新築)とは?建築物の環境性能を評価する仕組み

CASBEEは建築環境総合性能評価システムの略称で、CASBEE-建築(新築)は新築時の設計内容を評価の対象とします。全体像をつかむことが、採点基準を理解する近道です。ここでは、その位置づけを評価方法、評価対象、活用場面の3つに分けて解説します。

1-1. 新築時の設計内容をもとに建築物を評価するツール

CASBEE-建築(新築)は、建築物の新築時における設計内容に基づいて環境性能を評価するツールです。竣工前の評価に加え、竣工から3年までは竣工時の設計図書に基づく竣工後の評価にも使えます。

出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会「CASBEE-建築(新築)」

もともとは、届出書類の作成に使うCASBEE-新築(簡易版)と、詳細評価や認証取得に使うCASBEE-新築がありました。2014年に両者を統合して開発されたのがCASBEE-建築(新築)で、双方の機能を引き継いでいます。届出のための簡易な自己評価から、認証取得を目指す詳細評価まで同じツールで対応できる点が特徴です。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-建築(新築) 開発の背景」

1-2. 戸建住宅を除く建築物が評価の対象になる

CASBEE-建築(新築)は、戸建住宅を除くすべての用途に適用できます。用途の分類は、省エネルギー基準で用いられる8用途と集合住宅です。工場も含まれますが、Q1室内環境とQ2サービス性能の機能性では事務所などの居住エリアを評価し、生産エリアは対象外とします。

対象用途は非住宅系と住宅系に区分され、住宅系にあたる病院、ホテル、集合住宅は、住居・宿泊部分とそれ以外の建物全体・共用部分とに分けて評価する仕組みです。両者で採点基準が異なる評価項目もあるため、建物一体の結果を出す際は、項目ごとのスコアを各部分の床面積の比率で加重平均します。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-建築(新築) 開発の背景」

1-3. 自治体への届出や第三者認証に活用される

CASBEEの評価結果は、自治体の建築物環境配慮制度への届出と、第三者機関による評価認証の2つの場面で使われます。届出制度にCASBEEを活用する自治体は24あり、最も早い名古屋市は2004年4月に施行しました。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「自治体によるCASBEEの活用」

名古屋市では床面積2,000平方メートルを超える新築・増築に届出が義務付けられ、結果は5つのランクに格付けされて公表されます。

出典:名古屋市「建築物環境配慮制度(CASBEE名古屋)の概要」

CASBEE建築評価認証の対象は、延べ面積300平方メートル以上で、CASBEE-建築(新築)などにより評価された建築物です。認証を受けるには、CASBEE建築評価員が評価を実施し、申請図書を作成している必要があります。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE建築評価認証」

2. CASBEE-建築(新築)の採点基準の考え方

CASBEEの採点は、個々の評価項目を段階評価し、分野ごとに集計した上で1つの指標へまとめる流れです。構造を押さえると、評価結果のどこに弱点があるのかを読み取れます。ここでは、採点基準の考え方を、項目の採点、分野の構成、格付けの3つに分けて解説します。

2-1. 各評価項目をレベル1〜5の5段階で採点する

各評価項目は、レベル1からレベル5までの5段階で採点し、基準値となる得点はレベル3に置かれています。建築基準法などの最低限の必須要件を満たしている場合がレベル1、一般的な水準と判断される場合がレベル3です。一般的な水準とは、評価時点の技術・社会水準に相当するレベルを指します。得点はレベル1が1点、レベル5が5点です。

レベル3を下回る項目は、一般的な水準に届いていない箇所として読み取れます。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-建築(新築) 開発の背景」

自治体版では独自の運用も加わり、神戸市のCASBEE神戸ver.4では、評価レベルが3を超える項目に環境配慮概要の記入が必須とされました。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

2-2. 環境品質(Q)と環境負荷低減性(LR)をそれぞれ3分野で評価する

CASBEEは、建築物の環境品質を表すQと、建築物の環境負荷を表すLを別々に採点します。Lは、環境負荷の低減が高評価となるよりも、環境負荷低減性の増大が高評価となる形のほうが評価システムとして理解しやすいため、環境負荷低減性を意味するLRとして評価する仕組みです。QとLは、それぞれ3つの分野に分かれます。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-建築(新築) 開発の背景」

区分分野内容
Q(環境品質)Q1室内環境
Q(環境品質)Q2サービス性能
Q(環境品質)Q3室外環境(敷地内)
L(環境負荷)L1エネルギー
L(環境負荷)L2資源・マテリアル
L(環境負荷)L3敷地外環境

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「評価の仕組みと環境効率(BEE)」

各項目の採点結果は重み係数で加重され、分野別の総合得点であるSQ1からSQ3、SLR1からSLR3が算出されます。SQはQの、SLRはLRのスコアを表す記号です。それらを集約したQとLRの得点であるSQ、SLRが、最終的な格付けの計算に使われます。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-建築(新築) 開発の背景」

2-3. BEEの値によってSランクからCランクまで格付けされる

最終的な格付けは、QとLRの得点から算出するBEEという指標で決まります。BEEは、建築物の環境品質Qを分子、環境負荷Lを分母として求める環境効率の指標です。横軸にL、縦軸にQをとったグラフ上で、BEEは原点と結んだ直線の傾きとして表示されます。Qが高くLが低いほど傾きは大きくなり、より環境性能の高い建築物と評価される仕組みです。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「評価の仕組みと環境効率(BEE)」

BEEの値が大きいほど上位となり、評価結果は次の5段階で格付けされます。

ランク評価の表現
S素晴らしい
A大変よい
B+良い
B-やや劣る
C劣る

出典:一般財団法人日本建築センター「CASBEE評価認証」

評価結果は、SからCまでのランクに加えて赤い星印の数でも表示されます。

3. 2024年版で見直された主な採点基準

CASBEE-建築(新築)の評価マニュアルは数年ごとに改定され、現行版は2024年版です。採点基準は制度や法令の動きに合わせて見直されます。ここでは、2024年版で見直された主な内容を3つに分けて解説します。

3-1. 建築物省エネ法の改正に合わせて省エネ性能の評価を強化

2024年版では、2024年4月の建築物省エネ法の改正に伴い、大規模非住宅用途のBEI、BEImの基準が強化されました。あわせて、住宅用途の2025年適合義務化に向けた対応も採点基準に反映されています。BEIは一次エネルギー消費量の設計値を基準値で割った値で、小さいほど省エネ性能が高くなる指標です。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「図書/機関誌」

同じ流れは自治体版にも及んでいます。神戸市は2026年4月1日のCASBEE神戸ver.4改訂で、外皮性能とLR1エネルギーの評価の見直しを主な内容に挙げています。外皮性能とは、外壁や窓など建物の外周部が持つ断熱・日射遮蔽の性能です。改訂後に届出を行う案件では、見直しの対象となった項目を評価シートで確かめる必要があります。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

3-2. 再生可能エネルギーの活用やコミッショニングの評価を拡充

2024年版では、再生可能エネルギーの活用、非化石化の推進の取組み、コミッショニングへの取組みに関する評価が拡充されました。コミッショニングとは、建築設備が設計の意図どおりに機能するかを検証し、必要な調整を行う一連の取組みです。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「図書/機関誌」

拡充された項目は、自治体版の評価シートでも確認できます。神戸市のver.4では、LR1-4.3の非化石エネルギーの導入の拡大と、LR1-4.4のコミッショニングの推進が改訂内容に挙げられました。設備機器の性能だけでなく、運用段階で性能を発揮させる取組みまで採点の対象に含まれる点が従来との違いです。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

3-3. LCCO2の評価を見直してホールライフカーボン(WLC)の表示に対応

2024年版では、従来のLCCO2の評価が、建築物ホールライフカーボン算定ツールのJ-CATに準拠する形へ更新されました。LCCO2は、建築物のライフサイクル全体で排出される二酸化炭素量を指す指標です。この見直しにより、企業の情報開示で課題となるサプライチェーン排出量、いわゆるScope3に関連する表示へ対応しました。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「図書/機関誌」

評価ソフトにもホールライフカーボンの計算シートが組み込まれています。評価ソフトは公開後も修正が重ねられており、2026年8月31日にはver1.24が公開されました。算定では、使用するソフトの版を確かめてから作業に入ることが大切です。

出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会「CASBEE-建築(新築)」

4. CASBEE-建築(新築)の評価の進め方

CASBEEの評価は、提出先に合わせた準備から始まり、評価ソフトへの入力を経て結果シートの読み取りまで進みます。順序を誤ると、作成した評価書が受け付けられない恐れもある点に注意しましょう。ここでは評価の進め方を、提出先の確認、採点、結果の読み取りの3つに分けて解説します。

4-1. 提出先で指定されている評価ツールの版を確認する

自治体への届出では、使用する評価ソフトとマニュアルの種類が自治体ごとに異なるため、着手前の確認が欠かせません。独自のツールを用意している自治体もあり、その場合は当該自治体のサイトからダウンロードします。

出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会「CASBEE-建築(新築)」

独自ツールの版が切り替わる時期も自治体ごとに違います。例えば神戸市は2026年4月1日に、CASBEE神戸の評価ソフトとマニュアルをver.3からver.4へ改訂しました。ver.4は、住宅・建築SDGs推進センターのCASBEE-建築(新築)2024年版に沿った内容です。旧版と現行版の使用範囲は、経過措置で定められています。改訂の前後に申請時期がかかる案件では、どちらの版で評価するかを提出先へ確認しましょう。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

4-2. 評価ソフトに建築物の情報を入力して採点する

評価ソフトは日本サステナブル建築協会のサイトから入手でき、評価マニュアルは住宅・建築SDGs推進センターで購入します。2024年版の評価ソフトは2025年3月31日に公開されました。

出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会「CASBEE-建築(新築)」

評価マニュアルはA4判296頁で、価格は9,570円(税込み)です。PDF版の配布はありません。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「図書/機関誌」

入力は、採点Q1からQ3、LR1からLR3の各シートで評価レベルを選び、計画書シートにBEI値などを記入する流れです。神戸市の届出では、評価結果表示シートやスコアシートなどを提出します。提出が求められるシートは提出先ごとに異なるため、入力前に必要書類をそろえると手戻りを防げます。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

4-3. 結果表示シートでBEEランクと得点の低い分野を確認する

採点結果は、スコアシートと結果表示シートの2つの書式に集約されます。評価項目ごとの採点結果は、まずスコアシートに一覧表示されます。結果表示シートには、QとLRの分野別の評価結果がレーダーチャートと棒グラフと数値で表示され、BEEの結果もグラフと数値で示される形です。

レーダーチャートは分野間の差が一目で分かるため、得点の低い分野を特定する手がかりになります。低い分野が判明したら、含まれる評価項目のレベルを個別に確かめ、引き上げの余地がある項目から設計を見直しましょう。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE-建築(新築) 開発の背景」

5. CASBEE-建築(新築)で高い評価を得るためのポイント

CASBEEの評価項目は、設備の仕様から敷地の計画まで設計の広い範囲に及びます。設計が固まってから採点すると、改善の余地がほとんど残らない結果にもなりかねません。ここでは、高い評価を得るためのポイントを3つに分けて解説します。

5-1. 基本設計の段階から評価項目を意識して計画する

CASBEEの採点対象には、設計の後半では変更が難しい敷地計画や建物配置に関わる項目が含まれます。Q3の室外環境(敷地内)やL3の敷地外環境が、これにあたる分野です。神戸市の届出では、外構緑化指数や空地率などを評価する場合に、計算の根拠を示した緑地計画図の提出が求められます。

届出の時期も、早めの着手を後押しします。神戸市の建築物総合環境計画書の提出期限は、特定集合住宅では建築確認申請の21日前、それ以外では工事着手の21日前までです。確認申請の前に評価を固める必要があるため、基本設計の段階で到達見込みを把握すると、後から大きく手を入れずに済みます。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

5-2. 省エネ性能の数値を早い段階で試算する

LR1エネルギーの評価は、計画書シートに入力するBEI値などの数値が土台になります。2024年版ではBEI、BEImの基準が強化されたため、従来と同じ設備仕様では以前の版と同じ水準に届かない場合があります。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「図書/機関誌」

BEI値の算出に使うのは、計画書シートへ入力する一次エネルギー消費量です。空調や照明の方式、断熱仕様といった設計の根幹に関わる要素が、この数値に影響します。設計がまとまってから数値が不足していると分かっても、取り得る手段は限られます。基本設計の段階で一度試算し、目標とするランクにどの程度の余裕があるかを確かめることが大切です。

5-3. CASBEEの評価実務に慣れた専門家へ相談する

CASBEEの評価を正しく実施できる者を認める資格がCASBEE評価員で、すでに1万人以上が取得しています。4つある資格のうち、CASBEE-建築(新築)を扱えるのはCASBEE建築評価員です。第三者から委託を受けて評価を行う場合は、CASBEE評価員であることを明示する必要があると制度要綱に定められています。

出典:一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター「CASBEE評価員登録制度」

評価員へ依頼する利点は、認証申請だけにとどまりません。神戸市の届出では、CASBEE建築評価員による届出なら添付図書を一部省略できます。自社に経験者がいない場合は、設計事務所や建設会社の評価員へ早めに相談し、使用する版と提出書類の範囲を確かめておきましょう。

出典:神戸市「CASBEE神戸の届出」

まとめ

CASBEE-建築(新築)は、戸建住宅を除く建築物を対象に、新築時の設計内容から環境性能を評価するツールです。各評価項目はレベル1からレベル5で採点され、QとLRを3分野ずつ集計した上で、BEEによりSからCまでの5段階に格付けされます。現行の2024年版では、省エネ性能の評価強化、再生可能エネルギーとコミッショニングの評価拡充、ホールライフカーボンの表示対応が図られました。

届出や認証の予定がある建築物では、提出先が指定する版を確かめ、基本設計の段階から評価の見通しを立てておきましょう。