住宅を建てるとき、「耐震性は十分か」「どの程度省エネなのか」といった性能は、見た目だけでは判断できません。住宅性能評価書は、国が定めた共通ルールに沿って第三者機関が住宅の性能を評価し、その結果を等級や数値で示す書類です。新築住宅では設計段階と施工段階で評価を受けられ、中古住宅では現在の劣化状況や必要に応じた性能評価を確認できます。
当記事では、住宅性能評価書の仕組み、新築・中古で評価される項目、メリット、申請手順、注意点まで分かりやすく解説します。
1. 建築時に取得する住宅性能評価書とは?
住宅性能評価書は、住宅の耐震性や省エネ性能などを共通の基準で評価し、その結果を示す書類です。ここでは、制度の仕組みと2種類の評価書の違いを解説します。
1-1. 住宅性能表示制度にもとづいて第三者機関が交付する
住宅性能評価書は、住宅性能表示制度にもとづき、登録住宅性能評価機関が住宅の性能を評価して交付する書類です。住宅性能表示制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にもとづく任意の制度で、国が定めた共通ルールに沿って評価します。
評価機関は、国土交通大臣などの登録を受けた第三者機関です。設計者や施工会社とは別の立場から確認するため、住宅ごとの性能を同じ基準で比べやすくなります。評価結果は、耐震性や省エネ性能などの項目ごとに等級や数値で示されます。住宅を建てる人にとって、希望する性能が設計や施工に反映されているかを確認する材料になります。
1-2. 設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の違い
新築住宅の住宅性能評価書には、「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2種類があります。主な違いは、評価する時期と確認する内容です。
| 種類 | 評価する時期 | 主な確認内容 |
|---|---|---|
| 設計住宅性能評価書 | 設計段階 | 設計図書をもとに、計画している住宅の性能を評価する |
| 建設住宅性能評価書 | 施工・完成段階 | 工事中と完成時に現場検査を行い、実際の住宅の性能を評価する |
設計住宅性能評価書は、着工前に住宅の性能を確認するための書類です。建設住宅性能評価書では、設計内容に加えて施工中や完成時の状態も第三者が確認します。そのため、図面上の性能だけでなく、実際の工事まで含めて評価を受けたい場合は、建設住宅性能評価まで取得する必要があります。
2. 新築住宅の住宅性能評価書で評価される項目
新築住宅の住宅性能評価では、耐震性や劣化対策、省エネ性能などを共通の基準で確認します。評価する項目には必須と選択があります。ここでは、主な評価項目と等級の見方を解説します。
2-1. 必須項目と選択項目がある
新築住宅の住宅性能表示制度では、評価項目が「必須項目」と「選択項目」に分かれています。 必須項目は4分野に設定されていますが、住宅の種類によって適用される項目数が異なります。一戸建てでは8項目、共同住宅等では共用配管と共用排水管に関する2項目が加わり、10項目が対象です。
| 分野 | 必須となる性能表示事項 | 一戸建て | 共同住宅等 |
|---|---|---|---|
| 構造の安定 | 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) | ○ | ○ |
| その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) | ○ | ○ | |
| 地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法 | ○ | ○ | |
| 基礎の構造方法及び形式等 | ○ | ○ | |
| 劣化の軽減 | 劣化対策等級(構造躯体等) | ○ | ○ |
| 維持管理・更新への配慮 | 維持管理対策等級(専用配管) | ○ | ○ |
| 維持管理対策等級(共用配管) | ― | ○ | |
| 更新対策(共用排水管) | ― | ○ | |
| 温熱環境・エネルギー消費量 | 断熱等性能等級 | ○ | ○ |
| 一次エネルギー消費量等級 | ○ | ○ |
共同住宅では、住戸専用部分だけでなく共用配管や共用排水管の維持管理・更新のしやすさも評価対象になります。その他、火災時の安全、空気環境、音環境、高齢者等への配慮などは選択項目で、必要に応じて評価を追加できます。
2-2. 耐震性や劣化対策の性能を等級で示す
耐震性や劣化対策は、住宅性能評価書で等級として確認できます。耐震等級のうち「構造躯体の倒壊等防止」は、地震に対して建物が倒壊・崩壊しにくい程度を3段階で示します。
| 耐震等級 | 評価の目安 |
|---|---|
| 等級1 | 建築基準法で求められる程度 |
| 等級2 | 等級1の1.25倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度 |
| 等級3 | 等級1の1.5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度 |
劣化対策等級は、柱や梁などの構造躯体を長く使うための対策の程度を示すものです。
| 劣化対策等級 | 評価の目安 |
|---|---|
| 等級1 | 評価方法基準に定める最低限の劣化対策が講じられている |
| 等級2 | 2世代、おおむね50~60年まで大規模な改修が必要になる期間を延ばすための対策 |
| 等級3 | 3世代、おおむね75~90年まで大規模な改修が必要になる期間を延ばすための対策 |
いずれも数字が大きいほど高い性能を示します。ただし、劣化対策等級の年数は、通常想定される自然条件や維持管理条件のもとでの目安です。
2-3. 省エネ性能は断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級で示す
住宅の省エネ性能は、「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」の2つで確認します。 断熱等性能等級は、外壁や窓などの断熱性能や日射を遮る対策など、住宅外皮の省エネ性能を評価するものです。
一次エネルギー消費量等級は、暖房・冷房、換気、給湯、照明などで使うエネルギーの削減程度を示します。いずれも等級が高いほど高い性能を表します。一次エネルギー消費量等級には2025年12月から等級7・8が追加され、より高い省エネ性能も段階的に示せるようになりました。外皮と設備の両面を見ることで、住宅の省エネ性能を具体的に確認できます。
3. 中古住宅の住宅性能評価書で評価される項目
中古住宅の住宅性能評価では、現在の建物に劣化や不具合がないかを確認し、必要に応じて耐震性などの性能も評価します。ここでは、現況検査と個別性能評価の内容を解説します。
3-1. 現況検査で劣化や不具合の状況を確認する
中古住宅では、まず現況検査によって住宅の劣化や不具合の状態を確認します。外壁のひび割れ、床の傾き、壁や天井の漏水跡などを部位ごとに調べ、補修や詳しい調査が必要な程度の事象があるかを判定します。検査は、目視や計測を中心に行われます。
さらに、一定の検査結果をもとに住宅全体の劣化状況をまとめる「総合判定」も行います。部位等・事象別の判定と総合判定は必須です。木造部分がある住宅では、希望に応じて土台や柱の腐朽、シロアリ被害を詳しく調べる「特定現況検査」も選択できます。中古住宅では、現在どのような状態にあるかを客観的に確認できる点が特徴です。
3-2. 個別性能評価で耐震性などの性能を評価する
中古住宅では、現況検査に加えて、希望する項目について個別性能評価を受けられます。たとえば、地震に対する強さを示す耐震等級など、確認したい性能表示事項を選んで評価を申請できます。個別性能評価は必須ではなく、必要な項目だけを選択する仕組みです。
評価できる項目には、構造の安定や火災時の安全などがあります。評価では、建物の現在の状態や、図面・計算書など確認できる資料をもとに性能を判定します。ただし、中古住宅では新築住宅と同じすべての項目を評価できるわけではありません。住宅の状況や残っている資料によって評価できる範囲が異なるため、目的に合わせて必要な性能を選ぶことが大切です。
4. 住宅性能評価書を取得するメリット
住宅性能評価書を取得すると、保険や住宅ローン、トラブル対応、売却時の説明などで役立つ場合があります。ここでは、代表的な4つのメリットを解説します。
4-1. 地震保険料の耐震等級割引を受けられる
住宅性能評価書で耐震等級が確認できる住宅は、地震保険の耐震等級割引を受けられる場合があります。 割引率は、耐震等級1で10%、等級2で30%、等級3で50%です。耐震性能が高いほど、保険料の負担を抑えやすくなります。
ただし、割引は自動で適用されるものではなく、保険会社へ所定の確認資料を提出する必要があります。住宅性能評価書は、その確認資料の1つとして利用できます。また、地震保険には免震建築物割引や建築年割引などもありますが、複数の割引を重ねて使うことはできません。契約前に、利用できる割引の種類と必要書類を保険会社へ確認しておきましょう。
4-2. 住宅ローンの金利優遇を受けられる場合がある
住宅性能評価書で省エネ性や耐震性など一定の性能を確認できる住宅は、住宅ローンの金利優遇を受けられる場合があります。 代表例が、住宅金融支援機構の「フラット35S」です。一定の技術基準を満たす住宅では、借入金利が一定期間引き下げられます。
ただし、住宅性能評価書を取得しただけで金利優遇が決まるわけではありません。利用する住宅ローンごとに求められる性能や証明方法、審査条件が異なります。たとえばフラット35Sでは、省エネルギー性や耐震性などについて所定の基準を満たす必要があります。利用を検討する場合は、金融機関や住宅金融支援機構で条件を確認しましょう。
4-3. 建設住宅性能評価書があれば指定住宅紛争処理機関を利用できる
建設住宅性能評価書が交付された住宅では、住宅の工事請負契約や売買契約などをめぐるトラブルが起きた際に、指定住宅紛争処理機関へ紛争処理を申し立てられます。弁護士や建築士などの専門家が間に入り、あっせん・調停・仲裁による解決を図る制度です。
申請手数料は原則1万円で、通常は現地調査費などの追加費用もかかりません。対象になるのは「建設住宅性能評価書が交付された住宅」であり、設計住宅性能評価書だけを取得した住宅は、この評価住宅としての紛争処理制度の対象にはなりません。万一の不具合や契約トラブルに備えられる点は、建設住宅性能評価を受ける大きな利点です。
4-4. 売却時に住宅の性能を客観的に示せる
住宅性能評価書があると、売却時に耐震性や省エネ性能などを等級や数値で示し、住宅の性能を買主へ説明しやすくなります。売主や不動産会社の説明だけでなく、登録住宅性能評価機関による評価結果を提示できるため、住宅の特徴を客観的な資料として伝えられます。
住宅性能評価書があるからといって、必ず高く売れたり、短期間で売却できたりするわけではありません。売却価格は立地や築年数、建物の状態、市場動向など多くの条件で決まります。評価書は価格を保証するものではなく、住宅の性能に関する情報を整理して買主へ示すための資料として活用するものと考えるとよいでしょう。
5. 建築時に住宅性能評価書を取得する流れ
建築時に住宅性能評価書を取得する場合は、設計段階の評価と、工事中・完成時の現場検査を順に受けます。ここでは、申請から建設住宅性能評価書が交付されるまでの流れを解説します。
5-1. 設計段階で目標等級を決めて設計住宅性能評価を申請する
設計住宅性能評価は、建てたい住宅の性能水準を決め、設計図書に反映した上で登録住宅性能評価機関へ申請します。申請時には、評価項目ごとの自己評価結果を記した自己評価書や、その根拠となる設計内容説明書、配置図・平面図などの図書を提出します。
評価機関は、日本住宅性能表示基準と評価方法基準に沿って設計図書を審査します。希望する耐震等級や省エネ性能などを満たす設計になっていることが確認されると、設計住宅性能評価書が交付されます。後に建設住宅性能評価を受ける場合も、この設計段階の評価結果が重要な基本になります。
5-2. 工事中の現場検査を経て建設住宅性能評価書が交付される
設計住宅性能評価書の交付後、建設住宅性能評価を申請すると、登録住宅性能評価機関が工事中と完成時に現場検査を行います。検査では、設計住宅性能評価を受けた図面通りに施工されているかを、施工状況の記録書類と実際の現場を照らし合わせて確認します。
3階建て以下の住宅では、原則として4回の現場検査が行われます。基礎配筋工事の完了時、躯体工事の完了時、内装下地張り直前、竣工時などが主な確認のタイミングです。完成後には見えなくなる部分も工事中に確認され、必要な検査と評価を終えると、建設住宅性能評価書が交付されます。
6. 住宅性能評価書を取得する際の注意点
住宅性能評価書を取得する際は、評価にかかる費用だけでなく、目標とする等級や取得時期も確認する必要があります。ここでは、費用面と新築時に取得しなかった場合の対応を解説します。
6-1. 評価費用と等級を上げるための工事費がかかる
住宅性能評価を受けるには、登録住宅性能評価機関へ支払う評価料金がかかります。料金は各評価機関が定めており、住宅の種類や床面積、申請する項目などによっても異なるため、事前に料金表や見積もりを確認しましょう。
また、希望する耐震等級や断熱等性能等級を満たすために、構造や断熱材、窓などの仕様変更が必要になれば、建築費が増える場合があります。評価書の取得費用だけでなく、目標とする性能を実現するための追加費用も含めて、住宅会社と事前に予算を確認しておくことが大切です。
6-2. 新築時に取得しなかった場合は既存住宅の評価を検討する
新築時に住宅性能評価書を取得していなくても、完成後は既存住宅を対象とした住宅性能評価を受けられます。現況検査では、外壁のひび割れや床の傾きなど、現在の劣化や不具合の状況を確認でき、必要に応じて個別性能評価も申請できます。
個別性能評価では、住宅の現況だけで確認できる項目のほか、設計図書や計算書などの資料を使って評価する項目もあります。新築時に住宅性能表示制度を利用した住宅のほうが、既存住宅になってから評価できる性能が多いため、後から新築時と同じ内容をすべて評価できるとは限りません。希望する項目を評価できるか、申請前に評価機関へ確認しましょう。
まとめ
住宅性能評価書は、耐震性や省エネ性能などを第三者機関が共通の基準で評価し、その結果を等級や数値で示す書類です。新築住宅では設計住宅性能評価と建設住宅性能評価があり、中古住宅では現況検査や必要に応じた個別性能評価を受けられます。
取得すると、地震保険料の割引や住宅ローンの金利優遇、紛争処理制度の利用などにつながる場合があります。一方、評価費用や性能を高めるための工事費がかかることもあるため、必要な等級や利用したい制度を確認したうえで取得を検討しましょう。


