BELS(ZEH・ZEB) 2026.10.27

ZEBの定義とは?4つの評価基準とメリットを解説

ZEBの定義とは?4つの評価基準とメリットを解説

ZEBとは、省エネルギーと創エネルギーによって年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロに近づけることを目指した建築物です。補助事業の要件や発注仕様でZEBという言葉を見かけても、『ZEB』とZEB Readyの違いや、どの数値を満たせば認められるのかは分かりにくい部分です。区分ごとの判定基準は削減率とBEIという指標で定められており、基準を押さえれば設計の初期段階でも狙える区分を見極められます。

当記事では、ZEBの定義と4つの区分、評価方法、省エネ基準との違い、ZEB化のメリット、BELS評価までの進め方を解説します。

1.ZEBとは年間の一次エネルギー収支ゼロを目指す建築物

ZEBは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称です。2015年12月の資源エネルギー庁のZEBロードマップ検討委員会とりまとめは、エネルギー負荷の抑制や高効率な設備の導入で大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入してエネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物をZEBと定義しています。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

国の地球温暖化対策計画でも、2030年に目指すべき建築物の姿として、新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることが掲げられました。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB普及目標とロードマップ」

1-1.ZEBは非住宅建築物・ZEHは住宅が対象

ZEBの評価対象は非住宅建築物で、住宅は同じ考え方をZEHとして別に推進しています。 非住宅の用途分類は、事務所等、ホテル等、病院等、百貨店等、学校等、飲食店等、集会所等、工場等の8つです。

住宅と非住宅が同じ建物に入る複合建築物では、非住宅部分を対象にZEBを評価します。延べ面積10,000m2以上であれば、一部の建物用途だけを取り出して評価する方法も選べます。ただし一部用途で評価する場合は、建築物全体で再生可能エネルギーを除き20%以上の一次エネルギー消費量削減を達成することが条件です。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

住戸と店舗が混在する建物では、どの範囲をZEBとして評価するのかを基本設計の段階で決めておきます。

2.ZEBの4つの区分

ZEBは、達成の度合いに応じて『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4区分に分かれます。敷地条件や建物規模によって導入できる再生可能エネルギーの量が変わるため、4段階で定性的な定義と定量的な判断基準が設けられています。判定に使う数値は、再生可能エネルギーを除いた省エネルギーだけの削減率と、再生可能エネルギーを含めた削減率の2つです。補助事業や発注要件では区分名で水準が指定されるため、名称と数値の対応を押さえておく必要があります。

区分省エネルギーのみの削減率再生可能エネルギーを含めた削減率BEIの水準
『ZEB』50%以上100%以上0.00以下
Nearly ZEB50%以上75%以上100%未満0.00超0.25以下
ZEB Ready50%以上75%未満0.50以下
ZEB Oriented用途別に40%以上または30%以上規定なし規定なし

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

2-1.ZEB

『ZEB』は、年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスになる建築物です。 判定は2つの要件を同時に満たすことが条件になります。1つ目は、再生可能エネルギーを除いて基準一次エネルギー消費量から50%以上を削減することです。2つ目として、再生可能エネルギーを含めた削減率が100%以上に達している必要があります。

再生可能エネルギー量に数えられるのは敷地内に設置した設備の分で、自家消費分に加えて余剰売電分も対象です。二重かぎ括弧付きの『ZEB』は4区分の最上位を指す表記で、総称として使うZEBとは意味が異なります。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

2-2.Nearly ZEB

Nearly ZEBは、ZEB Readyの要件を満たした上で、再生可能エネルギーを含めた削減率が75%以上100%未満になる建築物です。 BEIでは0.00を超えて0.25以下の範囲に当たります。再生可能エネルギーを除いて50%以上を削減している点は『ZEB』と同じで、差が出るのは創エネルギーで賄える量です。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

屋根面積が限られる中高層の建物や日射条件が不利な敷地では、太陽光発電設備の容量が制約される場合があります。『ZEB』を目標に設計を進めて創エネルギー量が足りなかった場合の着地点としても、Nearly ZEBを想定しておくと計画の修正がしやすくなります。

2-3.ZEB Ready

ZEB Readyは、再生可能エネルギーを除いたBEIが0.50以下の建築物で、創エネルギー設備がなくても達成できる区分です。定性的には、ZEBを見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化と高効率な省エネルギー設備を備えた建築物と位置づけられています。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

性能を高める手段は2系統に分かれます。断熱、日射遮蔽、自然換気、昼光利用で建物の負荷そのものを抑えるパッシブ技術と、高効率な設備に加えて地下水や河川水といった未利用エネルギーを活用するアクティブ技術です。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBに関する用語集」

太陽光発電設備を十分に置けない都心の建物では、ZEB Readyを最初の目標に据えると、外皮と設備の性能向上に投資を集中できます。

2-4.ZEB Oriented

ZEB Orientedは、延べ面積10,000m2以上の建築物を対象に、用途ごとの削減率と未評価技術の導入を求める区分です。 削減率は、再生可能エネルギーを除いて、事務所等、学校等、工場等が40%以上、ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等が30%以上です。あわせて、計算プログラムで評価されていない未評価技術の導入も求められます。

この区分は2019年3月のZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめで追加されました。用途によって削減のしやすさは異なるため、大規模な建物ではZEB Orientedで実績を積み、改修時にZEB Readyを目指す進め方も選べます。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

3.ZEBの評価方法

ZEBの評価は、設計段階の省エネルギー計算と、第三者による評価書の取得という2つの段階で構成されます。どちらもBEIという共通の指標を使うため、計算結果がそのまま表示制度の等級とZEBの区分につながる関係です。省エネ適合性判定の手続きと並行して進める部分もあるため、設計の初期から評価の段取りを決めると手戻りを防げます。

3-1.ZEB評価で用いるBEIとは

BEIは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値です。 基準一次エネルギー消費量は、地域、建物用途、室の使用条件などに応じて定められています。BEIが1.0であれば基準一次エネルギー消費量と同じ水準、0.5であれば半分の消費量という読み方になります。評価の対象になるのは、空気調和設備、空気調和設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機の5つです。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBの定義」

計算は国立研究開発法人建築研究所が公表するエネルギー消費性能計算プログラムで行うため、入力条件をそろえれば同じ基準で建物を比較できます。

出典:国立研究開発法人建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」

3-2.ZEBとBELSの関係

BELSは、BEIをもとに省エネルギー性能を星の数で示す第三者認証で、ZEBの区分表示もBELSで行います。 BELSは2014年に一般社団法人住宅性能評価・表示協会が開始した建築物省エネルギー性能表示制度です。星はBEI1.0以下の省エネ基準相当で2つ、BEI0.8以下で3つと、性能が高いほど増えていきます。

ZEBの基準を満たしていれば、星の表示に加えて『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Readyの表示もできます。非住宅の認証件数は、2024年6月30日時点で5,154件です。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBに関連する評価・認証・表示制度」

2024年4月からは新築建築物の販売や賃貸の広告で省エネ性能ラベルの表示が努力義務となり、非住宅のラベルにはZEB水準の達成状況が記載されます。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」

4.ZEBと省エネ基準の違い

ZEBは省エネ基準の適合義務より踏み込んだ水準であり、義務基準を満たしただけではZEBになりません。 2022年6月に公布された改正建築物省エネ法により、2025年4月1日から原則すべての新築住宅と新築非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられました。

出典:国土交通省「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について」

出典:国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」

非住宅の省エネ基準は、規模と用途で水準が分かれます。延べ面積300m2未満の小規模はBEI1.0です。2,000m2以上の大規模は2024年4月から用途に応じて0.75から0.85へ引き上げられ、300m2以上2,000m2未満の中規模についても、2026年4月1日以降に省エネ適合性判定を申請する建築物から同じ水準が適用されます。

出典:国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」

性能向上計画認定で用いる誘導基準は、事務所等、学校等、工場等が0.6、ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等が0.7です。この誘導基準の水準がZEH水準・ZEB水準と呼ばれており、遅くとも2030年度までに中大規模の省エネ基準をこの水準へ引き上げる方針が示されています。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH/ZEB)」

出典:国土交通省「ZEH・ZEB等の推進に向けた取組」

基準・区分一次エネルギー基準(BEI)の水準
省エネ基準(適合義務・非住宅300m2未満)1.0以下
省エネ基準(適合義務・非住宅300m2以上)用途に応じて0.75から0.85以下
誘導基準(ZEB水準・性能向上計画認定)用途に応じて0.6または0.7以下
ZEB Ready(再生可能エネルギーを除く)0.50以下
『ZEB』(再生可能エネルギーを含む)0.00以下

出典:国土交通省「省エネ基準・誘導基準・トップランナー基準の水準」

※省エネ基準のBEIは、太陽光発電設備とコージェネレーション設備の自家消費分を含む値です。

出典:国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」

義務基準の達成状況と目標とするZEB区分を取り違えると、外皮や設備の仕様を後から組み替える手戻りが生じます。

5.ZEB化の4つの主要なメリット

ZEB化の効果は光熱費の削減だけではありません。環境省は、エネルギー消費量の削減、健康・快適性と知的生産性の向上、不動産価値の向上、事業継続性の向上の4点をZEB化のメリットとして整理しています。メリットの範囲は、建物オーナー、テナント、建物を訪れる人という立場ごとに異なる点に注意が必要です。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化のメリット」

5-1.エネルギー消費量の削減により光熱費を抑えられる

50%の省エネルギーを達成するZEB Readyであれば、創エネルギー設備がなくても光熱費を40%から50%程度削減できるという試算が示されています。 延べ面積10,000m2程度の事務所ビルで、1m2当たりの年間光熱費を2,000円、削減率を50%と置くと、年間1,000万円程度の光熱費削減になります。

自社ビルかテナントビルかで削減分の帰属が変わるため、投資判断では誰の光熱費が減るのかを先に整理します。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化のメリット」

5-2.省エネと室内環境の快適性を両立しやすくなる

外皮と設備の性能を高めたZEBでは、エネルギー消費量を抑えながら室内環境の質を保てます。 設計や運用の仕方によっては、エネルギー消費量の削減と健康・快適性の向上はトレードオフの関係になります。空調の設定温度を我慢して消費量を落とす運用が、その典型です。断熱と遮熱の性能が高い外皮や、効率の高い熱源設備を備えた建物は、建物側の性能で負荷を下げられるため、我慢に頼らずに消費量を抑えられます。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化のメリット」

2019年に評価認証が始まったCASBEE-ウェルネスオフィスや、WELLなど、快適性や健康に焦点を当てた認証もあり、ZEBの省エネルギー性能と組み合わせて空間の質を示せます。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEBに関連する評価・認証・表示制度」

5-3.環境性能を可視化して建物・企業の価値を伝えやすくなる

BELSなどの認証でZEBの性能を等級として示せるため、入居者や投資家へ環境性能を伝えやすくなります。 SDGsやESG投資の広がりを背景に、建物の環境性能は企業評価の材料になっています。エネルギー性能が高いZEBは、BELS、CASBEE、LEEDといった認証で高い評価を取得しやすい建物です。

東京23区内に立地する事務所ビルを対象にした分析では、環境認証を取得しているビルの新規成約賃料にプラスの影響が出ています。賃料や企業評価への影響は立地や築年数などの条件にも左右されるため、認証の有無だけで判断せず、条件をそろえて比較します。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化のメリット」

5-4.非常時に必要なエネルギー需要を抑えやすくなる

平常時のエネルギー需要を下げておくと、非常時に建物機能を維持するために必要なエネルギーも小さくなります。 創エネルギー設備があれば、災害などの非常時でも一定のエネルギーを自給でき、事業継続性の向上にもつながる点が強みです。創エネルギー設備がない場合でも、断熱性能の高い外皮とエネルギー消費効率の高い設備によって、建物機能の維持に必要なエネルギー需要そのものを抑えられます。

必要な自給量を見積もる出発点は、非常時に維持したい機能を照明、換気、サーバー室などの単位で洗い出す作業です。非常用発電機や蓄電池の容量を検討する前に、建物側で需要をどこまで下げられるかを確認します。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化のメリット」

6.ZEBの検討からBELS評価までの進め方

ZEBの検討は、建物条件の整理から始まり、省エネルギー計算と仕様調整を経て、BELS評価で区分を確定させる流れで進みます。建物の規模によっては、基本設計と詳細設計を同時に行うケースもあります。環境省のZEB PORTALが補助事業を活用した場合の想定として示す工程は、新築で2年程度、既存建築物の改修で3年程度です。補助申請は年度の初めに行うため、設計の着手時期から逆算します。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化実現までの流れ」

6-1.建物条件を整理して目標とするZEB区分を決める

最初に用途、延べ面積、敷地条件を整理し、目標とするZEB区分を1つ決めます。 延べ面積10,000m2以上の建築物であればZEB Orientedも選択肢に入り、敷地内に太陽光発電設備を十分に設置できる建物なら『ZEB』やNearly ZEBを狙えます。屋根面積が限られる建物で狙いやすいのは、創エネルギーに頼らないZEB Readyです。

既存建築物はZEB化が難しい場合があるため、基本設計を行うレベルでZEB化可能性調査を実施し、複数の建物をまとめて調査すると効率的です。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化実現までの流れ」

6-2.省エネ計算を行い外皮・設備仕様を調整する

エネルギー消費性能計算プログラムでBEIを算出し、目標の区分に届くまで外皮と設備の仕様を調整します。 省エネ適合性判定の申請日によって、適用される基準そのものが変わる点には注意が必要です。

中規模の非住宅では、2026年4月1日以降に申請する建築物から引き上げ後の基準が適用され、施行日前に申請した計画と、その計画に関する変更申請には改正前の基準が適用されます。設計スケジュールは基準の施行日と申請日を突き合わせて組み、どちらの基準で評価されるのかを先に確定させます。

出典:国土交通省「中規模非住宅建築物に係る省エネ基準の引上げについて」

6-3.BELS評価を申請してZEB区分を確認する

ZEB Ready以上の区分では、BELS評価でBEIが0.5以下であることを証明してもらう必要があります。 BELS評価の時期について規定はありませんが、省エネ適合性判定と同時に行う進め方が一般的です。同じ計算結果を使える部分があり、二重に計算し直す手間を抑えられます。評価が済めば、星の表示に加えてZEBの区分表示が可能になり、補助事業の申請や建物の性能説明に使える資料がそろいます。

BELSは設計時点の性能を評価する制度です。竣工後の運用でも性能を発揮させるには、エネルギーの見える化や設備のチューニングを含む運用体制まで計画に入れます。

出典:環境省「ZEB PORTAL ZEB化実現までの流れ」

まとめ

ZEBは、省エネルギーと創エネルギーで年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロに近づける非住宅建築物で、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4区分に分かれます。省エネ基準の適合義務を満たすだけではZEBの水準に届きません。目標とする区分を先に決め、省エネルギー計算と仕様調整を経てBELS評価で確定させる流れが基本です。

まずは建物の用途と延べ面積、敷地条件を整理し、どの区分を狙えるかの確認から始めてみてください。当サイトでは、建築物の省エネルギー性能や関連制度の詳しい情報を発信しています。ZEB化の検討を進める際は、ぜひ当サイトの関連記事もご活用ください。

※当記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています