東京・延床面積5,000m²の新築中規模オフィスビル。テナント誘致の差別化として「ZEB Ready認証(BEI ≦ 0.5)」の取得を目指される案件で、設計事務所様より省エネ計算をご依頼いただきました。
ご依頼時の状況
当初の計画では、空冷ヒートポンプチラー3台を「常時並列運転」する仕様でご検討されていました。この仕様で省エネ計算(BEI算出)を実施したところ、BEI(空調)が0.78、建物全体BEIも0.65という結果に。ZEB Readyラインの0.5には届かず、目標達成のためには空調系の見直しが必要な状況でした。機器のグレードアップは予算的にハードルが高く、計算側の工夫で目標値に近づけるアプローチが求められました。
BEI試算:台数制御を組み込んだ場合
そこで弊社からは、負荷に応じて稼働台数を自動で切り替える「台数制御」を組み込んだ仕様でBEIを再試算するご提案をしました。具体的には3台のチラーを以下のように制御する想定で計算しました:
- 低負荷時(30%以下):1台のみ運転
- 中負荷時(30〜65%):2台運転
- 高負荷時(65%超):3台運転
各チラーには負荷追従インバーターを搭載し、稼働中の機器は常に50〜60%以上の負荷率を維持する条件で、年間8760時間の負荷変動を時刻別に解析。この負荷率帯はチラーの効率(COP)がピークになるゾーンであり、3台フル稼働で全機が低負荷帯になる従来運用に比べ、効率が大幅に改善する想定で試算しました。
試算結果:数値で見る効果
BEI(空調)は0.78から0.42へ大幅改善(46%改善)。建物全体のBEIも0.65→0.48となり、ZEB Ready認証の取得ラインをクリアできる試算結果となりました。一次エネルギー消費量で見ると年間およそ180,000kWh/年の削減、CO2換算では約85t-CO2/年の削減効果に相当します。
なぜここまで効くのか
台数制御の最大のメリットは「効率の良い負荷帯で運転を維持できる」こと。一般に空冷ヒートポンプチラーは負荷率50〜80%付近でCOPが最大化し、それより低い負荷帯では効率が大きく下がります。3台を常時並列運転する仕様の場合、各機が30%程度の低負荷帯で動くことになり、機器のスペックに対して効率が出ません。台数制御を組み込んだ仕様で計算すると、稼働している機器が高効率帯で動く前提となるため、結果的に建物全体の一次エネルギー消費量を引き下げられます。
ZEB認証への貢献度
ZEB Readyラインに乗せるための最大の貢献カテゴリは「空調」で、本物件では台数制御を含む空調制御の最適化だけで建物全体BEIを0.17ポイント押し下げる試算結果に。これは断熱性能の強化や外皮の見直しで得られるBEI改善量とほぼ同等の効果です。
まとめ
機器グレードを変えずに、制御方式の見直しだけでZEB Readyラインに乗せられた事例。建物の省エネ計算では、機器スペックの選定と並んで「制御方式の前提」が結果に大きく影響することが分かる案件でした。新築でZEB認証を狙うケースでは、空調制御の最適化が大きな選択肢となります。