誰もが憧れるさまざまな職業に密着して、その仕事内容にクローズアップ! ”なりたい自分探し”のヒントにしてもらおうという、この企画。
今回はデザイン事務所代表で、壁紙やペンキなど住まいと暮らしのDIYグッズを扱うインテリアショップのオーナーも務める、空間デザイナーの坂田夏水さんに密着。日々のお仕事について、またこの職業に就いた経緯もじっくりと伺ってきました。
空間デザイナー・坂田夏水さん |
![]() |
【 PROFILE 】 Name : 坂田夏水(さかた・なつみ) |
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築事務所や工務店などを経て2008年に独立。リノベーションやデザイン、設計を手掛けるデザイン事務所『夏水組』を設立。代表兼空間デザイナーを務める傍ら、壁紙やペンキなど住まいと暮らしのDIYグッズを扱う『Decor Interior Tokyo』もオープン。オリジナルのペンキやふすま紙などのインテリア資材の開発、またDIY講座やリノベーションを手掛けた物件の販売など、活躍の場を広げている。
空間デザイナーとは? ![]() ![]() |
祖父との思い出が導いてくれた |
ーインテリアの道に進んだきっかけを教えてください
「入り口は子どもの頃のリカちゃんハウスとか、シルバニアファミリーだったかもしれません。当時からけっこうこだわりがあったようで、リカちゃんの家の壁にきれいな包装紙を貼ってリメイクしていたみたいです(笑)。また、祖父が掛け軸の表装をしていたので、幼いながらに色や模様を選びながら掛け軸を仕上げていく姿をずっとそばで見ていました。色や柄を選ぶ環境が近くにあったので、自然と今の私が形作られたのかもしれません。
美大を進学先に選んだ後、建築学科に進もうと決めたのは、受験科目である数学と理科が得意だったから。結果的には合っていたんでしょうね。だからこそ、今があるのだと思っています」
ー28歳で独立を果たされて、その後のご活躍も素晴らしいですね!
「学生の頃から一級建築事務所でアルバイトをしていて、卒業後もそのまま就職して新築の図面を引いていました。その後、現場での経験を積もうと工務店に転職し、古民家を再生させる仕事を担当しました。それが本当に楽しかったんです。壊されてしまう建物をよみがえらせて、またそこに人が住み、喜んでもらえる。これって素晴らしくないですか? すごくいい建物なのに、そのままでは古くて住めないってところを見つけちゃうと、助けたくなってしまうんです。そこで独立して、リノベーションを専門とする会社を興そうと決めました。昔から一度決めたら迷わずに、誰がなんといってもやる!というのが私の性分なんです」
洋服をコーディネートするみたいに、住む家も暮らす人を輝かせる空間に仕上げたい |
ー坂田さんの現在のお仕事を教えてください
「『夏水組』というデザイン事務所と、『ゴングリ』というインテリア商品を企画販売をする2社の代表を務めています。
夏水組では古民家再生などのリノベーションを主とした内装デザインや、オリジナルでペンキやふすま紙などの商品開発、あとはメーカーさんとコラボして、ホテルやモデルハウスの内装も担当しています。うちのモットーは、お客さまの好みのインテリアを徹底的にかなえて差し上げること。お客様が欲しいテイストを実現させるために、どこが一番どストライクなのかを突き止めようと努力します。また、物販専門のゴングリをやっているからこそ、見せられる建材や資材の種類も豊富なのが売りです。これまでガーリーテイストはもちろん、純和風の日本家屋まで幅広くリノベーションしてきました」
ーそのゴングリさんのお店がこちらですね☝。オシャレなDIY商品が所狭しと並べられていますね!
「もともとはリノベーション用にと、海外で買い付けてきたおしゃれでユニークなフックやドアノブなどを倉庫にストックしていたんです。それを見た友人が『これ、おもしろいからお店としてやった方がいいよ』と言うので、それならやってみようと始めました。次第に売れすぎてストックだけでは回らなくなり、ならば仕入れるかと、どんどん商品を増やして今に至ります。今年の7月に移転した吉祥寺のお店は地元の人たちが普段使う通りに面しているので、お散歩ついでにのぞいてくださるお客様が多くいらしてくださいます」
![]() |
![]() |
アニマル型のフックが人気商品 / ドアプレートも簡単につけられる手軽さがウケている
ー今人気のインテリアというと?
「今の流行は、自分流にカスタマイズするインテリアです。ちょっと前までは“北欧風”が人気でしたが、今は無地のTシャツをペイントするように、インテリアも自分の好みでミックスさせるスタイルが人気です。mer読者の皆さんもきっとカスタマイズするのが好きな世代では? そこでおススメしたいのが、この2つのDIYグッズです」
フックステッカー ¥1,200(他に丸型もあり)
「これは簡単に貼ってはがせるステッカー型のフックです。賃貸など壁に穴を開けられない場所におススメ。耐荷重800gなので、アクセサリーや帽子をかけるのに最適ですよ」
(左上)インテリア フィルムテープ 大¥1,200 小¥600
(左下)インテリア マスキングテープ 大¥1,000 小¥500
「インテリア フィルムテープは防水加工なので、洗面所など水回りにも貼れてカンタンにDIYできます。また、マスキングテープはインテリアだけではなく、文房具やバッグに貼って自分流にカスタマイズできるなど、幅広く使えて人気です」
私の仕事に必要な“三種の神器” |
―坂田さんの仕事に絶対に必要な道具を教えてください
「(左から)
・オリジナルで製造販売しているペンキ30色の色見本帳…よく仕事でパリに行くんですが、街並みやインテリアでよく見かける人気の色でペンキを作ったんです。この色見本帳をリノベーションする現場に持っていって、どの色のしようかと選んでいます。
・iPhone…お客様との連絡ツールとして、さらには完成した部屋の竣工写真を撮るのに必需品です。以前は一眼カメラを用いていましたが、今はiPhoneで十分。ちなみにこのスマホケースの中には、オリジナルで製造販売している「ふすま紙」を入れています。パリでも“ウォールペーパー”として販売していて人気なんですよ。
・レーザーメーター…内装を手掛ける部屋の下見に行く時、あっという間に天井の高さや部屋の端から端までを測ることができて、かなり重宝しています」
未来の “空間デザイナー”へ |
ー最後に将来、坂田さんのように空間デザイナーになりたいという皆さんへ、メッセージをお願いします
「日本は世界にくらべると、衣食住の中でも“住”だけ関心が低いと言われてきました。DIYの経験値を調査しても、パリは60%以上の方が壁紙を貼ったことがあるのに対し、日本は10年前の調査で3%。それが今10%にまで増えて、数年後は30%までアップすると見られています。最近のSTAY HOMEで自分の住環境を見直された方も多く、うちのお店にも『私の部屋を塗るためのペンキを選びにきました』と若い女性が訪れるようになりました。まさしく、空間デザイナーとしての第一歩は、自分のお部屋を心地良い空間にすることからです。この仕事は、経験値を上げれば誰でもできるチャンスのある仕事だと思います。興味があるのなら、自分の部屋からスタートしてみてください。自分にとって心地良い部屋ってどんな空間なのだろう?と考えて、それを実現させることができたら、次は周りの人に自分が感じた豊かさや楽しさを勧めてみてください。その人がさらに幸せを感じてくれたのなら、それが空間デザイナーの仕事です。毎日の洋服をコーデしたり、料理をして調味料で味付けをするように、DIYも少しずつ経験値を上げていけば次第にうまくなれるはず。まずは迷わずにやってみてください!」
![]() |
Decor Interior Tokyo 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-26-10 TEL:0422-27-5193 営業時間:12:00~19:00 Web : https://decor-tokyo.com/ Online store : https://material-interior.com/ |
撮影/渡邉まり子
構成・取材・文/松野実江子.