梅雨時期はなかなか天日干しできないですよね。室内に干してカラッと気持ちよく乾かすことができたら楽ですが、部屋の中では乾きにくく、生乾きの嫌なニオイが付いてしまうこともあります。まるで天日干ししたかのような、気持ちのいい仕上がりで“部屋干し”するにはどうしたらいいのでしょうか。ランドリースペシャリストの一條 徹さんに聞きました。
ニオイのもとは雑菌
部屋干しでもっとも困るのは、“乾いた洗濯物にいやなニオイが付く”ことではないでしょうか。雑巾のようなあの嫌なニオイ、実は雑菌の繁殖によるものなのです。衣類を濡れたまま放置していると、その間に雑菌がどんどん繁殖していきます。洗濯機を回してすぐ外に干し、早く乾けば問題はないのですが、風が通らない室内で、なかなか乾かずに干されている洗濯物には、みるみるうちに雑菌が増えていきます。その雑菌こそがニオイのもとなのです。つまりにニオイだけごまかせばよいのではなく、菌の繁殖を防ぐことがニオイを発生させない近道なのです。
“天日干し”を部屋干しで再現
屋外に洗濯物を干すと、風が通るので早く乾きます。また、日光の熱と紫外線をあてることには消毒の効果があり、雑菌が繁殖しにくくなるのです。ただし、外に干すことは天気に左右されるだけでなく、花粉や排気ガスなどが洗濯物に付着するというデメリットもあるので、時期や場所によっては室内で干す方がいい場合もありますよね。室内であっても外で干したように乾かすには、天日干しの環境を室内に作ってあげることです。乾くまでの時間が短ければ短いほどいいので、早く乾かす方法を考えてみましょう。
洗濯前のルール
まずは洗濯物を洗濯機にかける前に、雑菌を繁殖させないようにすることが大切です。洗濯物の扱い方について見ていきましょう。
1.洗濯物を溜めない
下着やインナー、靴下などはその日のうちにサッと手洗いしてしまい、洗濯機で脱水だけかけて干しておけば翌朝には乾くのでおすすめです。手洗いといっても、洗濯板でゴシゴシする必要はないので、洗面台やバケツに水を張って洗剤を入れ、2~3分ほど押し洗いするだけでOK。特に汗をかく時期は、汗がついたままの下着やインナーを放置しておくより衛生的で、嫌なニオイが発生する心配もなくなります。干す洗濯物が多いと、それだけ干しているときに風が通りにくく、乾きにくい状況を作ってしまいます。洗濯物はこまめに洗い、なるべく少量ずつ干すよう心がけましょう。
2.洗濯物を濡れたままにしない
洗濯する前の衣類やタオルは、濡れたまま洗濯カゴに入れておくと、その間にも雑菌が繁殖し、ニオイの原因となってしまいます。汗をかいた衣類は、そのまま洗濯カゴに入れずハンガーにかけておき、乾かしておきましょう。タオルは特に乾きにくく雑菌が繁殖しがちなので、使ったあとすぐに洗わないのであれば、必ず干すようにしてください。バスタオルのように大判のものは、小さいサイズのものや速乾性の素材のものに変えるなど、乾きやすいものを使うというのもひとつの手です。
3.洗濯洗剤選び
洗剤は、洗濯物が乾くまで雑菌の繁殖を抑えることができる抗菌タイプのものがオススメです。「一人暮らしや帰宅が夜遅い方など、洗濯物を外に干すのが難しい方々が増えてきていますから、部屋干し専用の洗剤も多く出ています。部屋干しが多い時期はこのような専用洗剤も使ってみましょう」。
干し方のルール
部屋干しするときは、早く乾くような干し方で、場所を選んで干しましょう。
1.風が通るようにする
できるなら窓を開けて外の空気を取り込み、窓の近くに干すのがいいでしょう。ただし、外の空気の方が湿気っている雨の日は窓を閉め、室内の湿度が上がらないようにします。
「窓が開けられない場合は、窓の近くよりもお風呂場の脱衣所などの狭くて密閉できる空間に干し、扇風機や除湿機、サーキュレーターなどで風をまわしておきます」。
2.他の布ものが少ない場所に干す
人目が気にならないよう、リビングよりも寝室に干しがちですが、布団や洋服などが置いてある場所に湿ったものを干してしまうと、ほかのものが洗濯物の湿気を吸い込んでしまいます。
「ワンルームなどで、ベッドのある部屋に干さなければならないときは、除湿機やエアコンを取り入れて湿度を下げる工夫をしましょう」。
3.空気に触れる面を増やす
洗濯物を干すときは、衣類を折り畳んで掛けるようなものより、伸ばしたまま干すのがいいでしょう。
「下着などをピンチに干すときは、両サイドに丈の長いものを干し、内側には丈の短いものを干します。こうすることで、外側に干した乾きにくいものが早く乾きますし、風が届きにくい内側のものにも風が通るようになります」。
「また、タオルは折ってハンガーにかけず、上部だけをピンチで留めるなどして、重なりが少なくなるように干します」。
4.衣類同士がくっつかないように干す
衣類をハンガーにかけて干すときは、風通しが良くなるように隙間をしっかり開けて干しましょう。
「風でハンガーが動いて偏ってしまわないよう、スペースアップハンガーを使うなどして、間隔を保てるように干してください。干す場所が狭かったり、干す道具が少なかったりすると、洗濯物同士が混雑してしまうので、やはりいちばんは溜め込まずに、風が通る空間を作れる量で干すのがいいでしょう」。
生乾き処理のルール
それでも嫌なニオイが付いてしまったときは、放っておかず、きちんとニオイを落としましょう。
1.酸素系漂白剤で浸け置きする
ニオイが付いてしまった衣類をバケツに入れ、30〜40℃のぬるま湯と酸素系漂白剤、洗剤を入れて30分ほど浸け置きしましょう。
「浸け置きしたあとは、洗濯機でほかのものと一緒に洗ってください。酸素系漂白剤は色物にも使えて便利なのですが、効き目がゆっくりなので、洗濯するときに洗濯機に入れるより、いったん浸け置くほうが効果を発揮します。白いものなら塩素系でも構いません」。
2.鍋で煮洗いする
雑巾やタオル、厚手のものなどでどうしてもニオイが取れないときは、鍋に水と洗濯物を入れて、10分ほどぐつぐつ煮てみましょう。煮洗いすることで殺菌もできますから、キッチンタオルやふきんなどが汚れたら、定期的に煮洗いするのもおすすめです。また、ふきんやハンドタオルなどの小さいものは、水に濡らしてから軽く絞り、ラップで包んで電子レンジで1~2分ほど加熱してもよいでしょう(加熱したタオルは冷ましてから取り出し、よく絞って水気を切ってから干してください)。
アイロンをかける
生乾きのニオイは、いったん取れたと思っても、濡れたときにまた繊維の奥に入り込んだ雑菌が臭う場合があります。ニオイは一度ついてしまうと厄介なので、部屋干しのコツを掴んで、梅雨時期を乗り切りましょう。
教えてくれたのは
ランドリースペシャリスト / 一條 徹
プロダクトを中心とした情報の総合メディア「GetNavi web」の編集者。かつて勤めていた繊維メーカーでの経験と知識を生かして、衣類の素材に合わせた洗濯方法や洗剤選びを日々研究している。趣味は、スーパーやホームセンターの洗剤コーナー巡り。
提供元・心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」