モデルたちをよく知るカメラマンが、彼女たちの心の内をのぞくインタビュー連載「それでね」。
第5回目は三戸なつめ。
モデル以外に俳優や絵本作家として活躍する彼女が、今もこだわり続ける“読者モデル”。“読モ”全盛期を生きた彼女の軌跡とその覚悟とは…?
おじいちゃんと私
小学校の頃。
学校が終わるとおじいちゃんの家に帰って、
晩ご飯を食べて、お母さんが迎えに来るのが日常でした。
おじいちゃんはめっちゃ怖いんだけど、大好き!
おじいちゃん、余ったお米をベランダに撒くんですよ。
スズメに餌をあげるんです。
私も一緒になってあげていて。
でもおじいちゃん、鳩には厳しいの(笑)。
怒りながら追い払うんです。
一緒になってベランダで遊んでいました。
よく覚えてます。
ファッションとの出会い
中学校の時、制服じゃなくて私服だったんです。
そんなワケで、ファッション雑誌をよく見ていました。
当時よく見ていたのが、青文字系雑誌って言われていた
『Zipper』や『CUTiE』『SEDA』。
いつか出たいな~とか、
こんな服着たいな~って憧れていました。
その時、バンド『SHAKALABBITS』のUKIちゃんが大好きで
前髪を短くしたり、服を真似したりもしていました。
でもバレーボール部だったから、
いつも学校ではジャージだったんですけどね(笑)。
スナップデビュー
先輩に古着屋さんを教えてもらったりして、
古着を好きになったのも高1くらいからです。
それでよく大阪のアメリカ村に遊びに行くようになって、
ヘアサロンの人に声かけられてサロンモデルをやるようになったんです。
昔は……なんて言葉を使うとすごく年取ったなって思うんですけど
当時はSNSが今のように広まってなかったから、
街で声をかけられる以外、何かに出られるってなかったんですよね。
愛読していた雑誌の編集の方に声をかけられて
スナップページに載れた時はすごく嬉しかったです。
関西のモデルから上京へ
服飾の専門学校に入ってからサロンモデルをやったり、
ローカル雑誌のモデルやったりしていました。
当時は雑誌がたくさんあって、大阪でも忙しかったです。
今はほとんど無くなってしまって寂しいですよね。
当時出演していた雑誌『関西girl’s style』と今の所属事務所が
コラボでやっていたイベントに参加した時に、
事務所の人に声をかけてもらって、上京することにしました。
21歳で上京した頃、
「読者モデル」というジャンルが確立していた時代でした。
当時は青文字系雑誌がたくさんあったので、毎日忙しかったです。
土日もアパレルショップでのイベントがたくさんあって
休みはほとんどなかったですね。
上京当時は、とにかくやるしかない!
結果を残していきたい! という気持ちが強かったです。
全国誌で表紙を飾ることだったり、
巻頭ページに大きく載ることだったり、
スタイルブックを出すことだったり。
とにかく、がむしゃらに頑張っていました。
私の肩書
歌手活動を始めて、モデル以外の活動も増えてきた頃。
テレビに出たり、お芝居の仕事にも挑戦してみたり、
すごく視野が広がっていきました。
『mer』での自分の立ち位置もすごく考えたり、
流行と自分の好きな事の違いをどうやって消化するか?
とか、いろいろ考えました。
今ってもう読者モデルってあまり聞かなくなりましたよね。
わたしの時代の読モと、今の読モの在り方ってきっと違うんだろうなと思います。
今は雑誌からではなく、SNSから有名な人が出てくる時代。
WEB雑誌でも新しく入ったモデルさんはSNSで人気な子だったりする。
それが寂しかったりもするけど、おしゃれが好きで、
自分の好きを発信したいという気持ちは一緒なのかなって思います。
わたしは読者モデルを経て、今があります。
「読者モデル」という肩書きは、わたしをたくさん成長させてくれました。
だから雑誌というものに執着していきたいです。
何で?って聞かれたら雑誌で育ってきたから……と答えてしまうけど。
レギュラーで出ていた雑誌が全部なくなってしまって、今でも悲しいし悔しいです。
だからレギュラーモデルとして、青文字系の雑誌に出たいって今も思っています。
覚悟と責任
表向きは、モデル·俳優ですけど、
私自身は仕事の内容によって、自分の中での肩書きを変えてます。
merの時は「読モ」
お芝居するときは「俳優」
お話を書くときは「絵本作家」
テレビに出るときは「タレント」
そうした方が自分の気持ちが切り替えられて、
肩の力が抜けて自然にできるんです。
明らかにしないのも、ひとつの手なのですけど、
それはなんだか、逃げてるみたいだし、
色々やりすぎて全部中途半端なのは嫌だったので、
しっかり肩書きというものに覚悟と責任を持っていようと思います。
それぞれの肩書に対して。
わたしを見つけてくれたファンの皆さんありがとう。
って、昔も、今も思っています。
ほんとに感謝しています。
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三戸なつめ
写真・文/伊藤大作(The VOICE)
モデル/三戸なつめ